「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第514回
嘆きのミックスフライ

その夜は故あって早稲田のラーメン店「メルシー」で
チャーハンを食べた。金490円也。
食べすすむうち、やはりビールが飲みたくなって
小瓶を頼むことに。金330円也。

食後、界隈を歩くと
早大南門脇にあった喫茶店「P」が消えている。
向かいの雀荘「早苗」はそのままだ。
洋食店「高田牧舎」にも灯がともっている。
チャーハンを食べたあとだから
お腹は減っちゃあいないが
何かつまみながらビールが飲みたい。

店先のメニューを眺めつつ、
ガラス越しに店内をのぞくと
早大の先生と思しき方々が十数名、
横長のテーブルを囲んで食事会の様子だ。
卓上にはビールとオードブルだけだから
会合と呼んだほうがいいかもしれない。

入店する。
瓶ビールは大小ともにクラシックラガー。
生ビールはスーパードライの中ジョッキ。
ドライは「メルシー」で小瓶を飲んできた。
生と瓶の順序が逆になってしまったが
中ジョッキをお願いした。
瓶のあとに生を飲むことはまずない。

つまみに選んだのはミックスフライ(840円)。
内容は、海老・白身魚・蟹クリームコロッケ。
実は白身魚のムニエルと迷ったのだが
サービス係にムニエルの魚種をたずねると
真鯛という応えが返ってきた。
それではミックスフライのサカナも真鯛かと訊くと
返事に困ったお兄さん、いったん厨房に撤退後、
舞い戻ってのお応えがホキ。
白身といえないことはないが
給食や弁当のおかずに使われる冷凍の深海魚だ。
値段はあって無いに等しいといっては語弊があるか。
これがムニエル同様に真鯛であれば、
即決のところをしばし沈思黙考。
できれば避けたいホキながら
海老とコロッケもあることだし、
ミックスフライを選んだ次第。

白い皿の上には小ぶりの海老が2本、
大きめのホキの切身、鶏卵大のクリームコロッケ。
海老フライにはタルタルソースではなく、
自家製らしきマヨネーズが添えられ、
コロッケにはケチャップと
ウスターを混ぜたようなソースが掛かり、
付け合わせとして、ポテトサラダに
トマト・セロリ・キャベツ・レタスの生野菜。

さっそく海老にナイフを入れると、これが空振り。
海老の上半身はコロモだけで中が空っぽだったのだ。
ホキの切身からはいやな匂いが立ち上っている。
コロッケに至っては蟹の風味がまったくしない。
ことここに至り、840円の意味がやっと判った。
安物買いの銭失いとはまさにこのことで
適正価格は480円がいいとこだろう。

値段からして浅草の「グリル佐久良」や
「グリル・グランド」のミックスフライを
想定してはいなくとも、落差の大きさに茫然自失。
もれるは嘆息ばかりなりけり。
大学の先生方にもたまの休みには
「都の西北」を逃れて「都の東北」に赴き、
本物のミックスフライを味わっていただきたいものだ。


【本日の店舗紹介】
「高田牧舎」
 東京都新宿区戸塚町1-101
 03−3202−2376

 
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2008年6月20日(金)

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