「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第515回
カレーライスの三冠王

いまわしいあの惨劇の数日後、秋葉原を歩く。
見たところ、街の様子は変わっていない。
今はただ、被害者の方々のご冥福を祈る。

いきなり話題を変えて恐縮だが
今日はカレーライスのハナシ。
近頃の秋葉原は神保町に並び称されるほどの
カレー激戦区なのだそうだ。
神保町のカレー屋なら
ほぼ行きつくした感のあるJ.C.も
ニュー激戦区ではほとんど食べていない。
ただ、印象としてはまだまだ秋葉原は
神保町の足元にも及ばないという感じだ。

朝から一歩も外に出ず、原稿書きに追われていた日。
夕闇迫る頃、家を出て秋葉原を通過したのだった。
運動不足を解消するため、
目的地の神保町まで歩くつもりの道すがら、
とあるカレー店の前に人だかりがしている。
店先には雑誌の切抜きがやたらペタペタと貼られて
もっとも敬遠するタイプの店だった。
小さな店は立て込んでいて
客のほとんどが若いオトコたちだ。

日経トレンディだったかな、
抜き打ちカレーチェーン店選手権では
ライス・ルウ・カツの3部門でトップになり、
三冠王に輝いたんだそうだ。
カレーのチェーン店は5年以上前に
同じ秋葉原の「ココイチ」に入って以来だが
つい誘われて入店してしまった。
これから酒を飲むのに何やってんだろうネ、
と自戒しつつもカウンターの人となる。
おっと、その前に食券を買ったのだった。
4段階のサイズがあるうち、
最小のカツカレーヘルシー(700円)にする。

調理状況を目で追っていると、
カツは注文が入ってから揚げている。
およそ5分後、深めの皿に盛られたカツカレーが到着。
ルウは相当に黒く、左脇に千切りキャベツが添えてある。
この店はスプーンではなく、フォークを出してくる。
これはこれでいい。
外国人にカレーライスを食べさせると
一様にフォークをほしがるものね。

一口食べて不機嫌になった。
ルウにコクがなく、スパイスの香りにも乏しく、
一番初めに舌をヒットしたのは大量の化学調味料。
「何じゃ、こりゃあ!」なのである。
現代の若者はこの味を美味と感じるのだろうか。
この化学的な味をうまいと思ったら最後、
真っ当な料理には何も感じないだろう。
彼らをこんなふうに育てた
コンビニやチェーン店の罪は大きい。

揚げ立てのカツの肉は極薄、コロモはガリガリ。
これがカツ部門のチャンピオンとは想像もつかない。
ライスだけは合格だったが
このようなカレーライスが日本を席捲したら
日本の食文化は滅びてしまう。
常々思うが身体検査で視力・聴力のテストをするなら
子どものうちから味覚・嗅覚の検査も行うべきだ。
暗いところで本を読むと視力が落ちるように
化調まみれの食べものを食べ続けると
味力も衰退するに違いない。


【本日の店舗紹介】
「ゴーゴーカレー」
 東京都千代田区神田佐久間町1-16
 03-5256-5525

 
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2008年6月23日(月)

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