「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第516回
山芋三兄弟
=男の手抜き料理シリーズ第3回=

今日は近頃お疲れの方々に元気になっていただく。
精がつくかどうかは人によるのだろうが
昔から滋養強壮にはうってつけの山芋、
いわゆるとろろを食べつくそうという寸法である。

閏事しばらくごぶさたの向きは
旅行に出かけた奥様が帰宅する前夜の夕めし、
あるいは当日の昼めしに
山芋をしっかりと摂取し、その効能を確かめたい。

さて厨房に入る前に
とろろというと思い浮かぶ料理屋が3軒ある。
伝統に敬意を表して創業順に列挙すると、
筆頭は静岡は丸子(まりこ)宿の「丁子屋」だ。
慶長元年(1597)創業、何と420年の歴史を持つ。
静岡市を訪れたら、西に向かってとろろを楽しむか、
南に下って用宗港のしらすを味わうか、大いに迷う。

浅草は駒形橋の「麦とろ」は経営に失敗して
人手に渡ってしまったが、営業自体は続けている。
ただし、シンプルなとろろだけでなく、
いろいろゴチャゴチャと余計な料理を付加して
客単価をつり上げ、あざとさが見え見え。
そのやり方で苦い思いをしたのに
同じ轍を踏もうとするのは
経験から何も学んでいないことになる。

西新宿で開業以来、順調に業績を伸ばして
多店舗展開している「ねぎし」は元気。
牛タンとセットの麦とろを食べさせる。
BSE問題で米国産の牛タンが
入らなかった時期も何とか乗り越えた。

山芋には自然薯・大和芋・長芋などがあるが
廉価にしてサイズも手頃な長芋をすすめたい。
自然薯は高い上に手に入りにくいし、
とてつもなく長いから大家族でないと消費しきれない。
大和芋はネットリ感が強く美味ながら皮がむきにくい。
今日は長芋を三様に楽しむことにする。
名づけて、山芋三兄弟。

それではお待たせしました、アラ・キュイジーヌ!

(1) ちょっと大きすぎるかなと思うくらいの長芋を購入。
  皮をむき、酢を数滴垂らした水に沈めてアク抜き。
  適宜(5分でも15分でも構わず)取り出して
  A、B、Cと三等分に切断する。

(2) Aはなるべく細く長い千切りに。
  Bはすりおろして卵黄を1つ落とし、月見芋に。
  CもすりおろしてBの残りの卵白と合わせ、
  薄口醤油で味を調える。
  昆布出汁を加えたいが、濃いかつお出汁は避ける。
  長芋をおろすにはすり鉢とすりこぎが理想だが
  それでは手抜き料理にならないのであきらめる。

(3) Aは食べ際に青海苔を振る。四万十川産がベスト。
  Bは食べ際に濃い口醤油を垂らす。
  Cはすでに食べられる状態。酒にも飯にもよく合う。
  Cに青海苔を使う場合、Aにはおろし生姜かわさびを。

長芋の分量が多いときにはCを多めに作り置き、
帰宅したお内儀に食べさせてW絶倫作戦も一法。
わびしい一人暮らしの場合は酢を合わせてから冷蔵庫へ。
翌日、わさび(できれば本わさび)を落とし、
よく冷えたそれを再度味わう。
ここで浮上する問題が一つ。
連日に渡り、長芋によってつちかった精力を
一体どこにぶつければよいのか?
That is the question.

 
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2008年6月24日(火)

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