「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第525回
豚のアタマの漢方薬蒸し

雑司が谷墓地に近い東池袋の裏路地に
「豊屯(ほうとん)」という
変わった名前の北京料理店がある。
北京料理というと北京ダックを始め、
宮廷料理を思い起こすが
ごく庶民的な町の中華料理店だ。
おいしい店がほとんどない池袋界隈で
安くてうまくてユニークな存在と聞いた。

ちょうど1年前、
東池袋にオープンした新中央図書館に寄った帰りに
近くの「豊屯」を訪れる気になった。
その日は秋葉原の居酒屋「赤津加」で
しっかりとした昼食をとったため、
午後7時近くになっても空腹感を覚えず、
よほどそのまま都心に戻ろうという気になったが
そうそう行ける場所ではないため、
何か軽くつまみながら
ビールでも飲もうと思い直したのだった。

独りでフラリと入店すると
カウンターにはいくつかの空席がある。
奥のテーブル席はグループ客を中心に
ワイワイガヤガヤと活況を呈していた。
ビールを頼むとキリン・クラシックラガーの大瓶がきた。
泡を立てないようにグラスに静かに注ぎながら
壁の品書きに目をやる。
突き出しは白髪ねぎに醤油ダレをかけただけだが
サービス品らしく、これは仕方がない。

どうやら漢方薬を使った蒸しものが自慢のようだ。
それも豚のモツや体のはしばしがずいぶん多い。
アタマ・耳・タン・胃袋・レバー・子袋・足・尻尾、
ありとあらゆる部位が勢揃いしている。
せめて相方でもいれば、数種類試せるものを
単独で、しかも腹がへっていないとあっては
おのずと食べられる量は決まってくる。

注文したのは最初に豚のアタマ。
アタマといってもどこがアタマか判断に苦しむ。
ほほ肉あたりもすべてひっくるめてアタマなのだろう。
コラーゲンたっぷりだが豚足と比べてかなり脂っこい。
後半は持てあまし気味で紹興酒のお世話になる。
品書きに紹興酒18度、老酒17度とあり、
その違いが判らないが一応、紹興酒にしたのだ。
ピータンほどではないにせよ、
アタマは紹興酒によく合った。

続いて小松菜と干し海老の炒めもの。
スープ多めの炒め煮といった風でけっこうな量がある。
残念なのは火を通しすぎていて
小松菜からシャッキリ感が失われていたこと。
こういう料理は強火で手際よく、
ササッと仕上げてほしいものだ。

ここでほとんどの客が注文する
この店の一番人気の存在に気づく。
溜豆腐なる一品で作っているところをうかがい見ると
ドロドロの流動食みたいな代物。
お腹に余裕は残っていないが
スモールサイズがあると聞いて注文してみた。
はたして豆腐と豚バラとニラがごちゃ混ぜに
なったところに生玉子を落として仕上げる
風変わりな料理はうまくも何ともない。
「名物にうまいものナシ」――つくづく昔の人は正しい。


【本日の店舗紹介】
「豊屯」
 東京都豊島区東池袋4-2-9
 03-3971-5734

 
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2008年7月7日(月)

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