「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第526回
夜に悶えている

最近しばしば、夜に悶えている。
いえ、あちらのほうのハナシではなく、
もうちょいと上部の胃袋のことだ。
次著「J.C.オカザワの昼めしを食べる」の
原稿締め切りが今月末日。
筆はわりと速いほうなので
締め切りに間に合わないということは
まずないのだけれど、昼に訪問予定の店の数が問題だ。

毎日、必死に食べ歩いているものの、
行かなきゃいけない店がまだずいぶんと残っていて
ランチタイムに飛び回るだけではハカがいかない。
となると、そば屋・とんかつ屋など、
昼夜を問わずにほぼ同じものを出すところへは
夜に出向いて昼めしの取材をすることになる。
とんかつ屋ならば定食のごはんを減らしてもらえるが
そばやうどんを減量してもらうわけにもいかない。
結果、夜に多量の炭水化物を摂取する破目に陥る。

そうすると胃袋が苦しがるんですな。
それも身悶えするほどに。
しかもモリモリ食べながら酒を飲むと
酒の味もガクンと落ちるんですな。
そんなこんなで何だかこのところ、
欲求不満気味のJ.C.なのであった。

その日もそうだった。
下町の森下に近い深川めしの「みや古」に
到着したのはまだまだ明るい17時ちょうど。
深川丼か深川めしの専門店を物色していたのだが
なかなか真っ当な店にあたらない。
深川不動尊参道の「R」、深川江戸資料館前の「F」、
ともに下町人情の風上にも置けぬ劣悪店だし、
「F」の近くの「福佐家」はやや力不足なのだ。
そこで最後の望みを託したのが、ここ「みや古」。

時間が早いからほかに客の姿が見えない。
40席ほどはあろうか、籐畳の入れ込みに独り座って
さっそくビールを頼み、深川めしセットを注文。
ビールの突き出しに蛍いかの沖漬けが出た。
四方の壁にはペタペタとすさまじい数の
品書き札が貼られている。
しゃこの天ぷらや柳かれいの若狭焼き、
はたまた桜海老のかき揚げなど、
好物がズラリと並んでいるが
今宵は酒を飲みに来たのではない。

大瓶のビールが残り3分の1ほどになったところで
お膳に乗った深川めしがやって来た。
フタ付きの竹製わっぱに収められ、
点心のシューマイのように蒸し上げられている。
プックリとしたあさりのむき身がハジケんばかり。
それも悪店「F」のようにケチケチしないで
ふんだんに使われている。

茶碗に2膳はラクにあった深川めしのほか、
小あじとウドとレタスの酢味噌掛け、
焼き麩と水菜のお吸いもの、
きゅうり・白菜・たくあんの新香、
すっかり食べ終えたときに時計は18時を回っていた。
大瓶のビールと併せてお腹ははちきれんばかり。
深川めしは美味であったが酒を飲まずに飯を食うと
なんだか一晩ムダにしたような気分に襲われる。


【本日の店舗紹介】
「深川めし本家 みや古」
 東京都江東区常盤2-7-1
 03-3633-0385

 
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2008年7月8日(火)

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