「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第529回
こんなに安くていいかしら

京成線沿線の墨田区や葛飾区には
日本があまり豊かでなかった頃の
雑多な庶民性を駅とその周辺に
色濃く漂わせるところがたくさん残っている。
京成立石駅の周りもまさしくそんなエリアで
こういう場所が好きな人の目には
たまらなく魅力的な町として映る。

立石で一番有名な店は線路の南側の
アーケードにある「宇ち多」。
もつ焼きともつ煮込みが自慢の大衆酒場だが
この店については、いずれ紹介する機会があるだろう。
本日の主役は線路の反対側にある「鳥房」。
ローストチキンが大好物というお嬢さんをお連れした。

表通りの角地で営む鳥肉専門店直営の店で
その角を路地に入ると時代掛かった酒場がある。
黒澤映画の「用心棒」に登場しそうなたたずまい。
障子の引き戸を引いて中に入ると
カウンターが肉屋と背中合わせになっていた。

店の名物は一にも二にも若鶏の唐揚げ、これにつきる。
鶏半羽がズドンと来て、それが1人前。
とにかく断トツの一番人気につき、
誰もが当たり前のようにオーダーしてしまうのである。
「ケンタッキー」でフライドチキンを
注文しない客があったとしても
「鳥房」で唐揚げを頼まぬ客はまずいない。
こういう商品こそが名代と呼ばれるにふさわしい。
テイクアウトの注文電話まで
リンリンリンリンとにぎやかなことこの上ない。

ビールはキリンラガーの大瓶。
突き出しに鳥料理屋らしく鳥皮の生姜煮が出た。
あとで支払額から計算してみたら
この突き出しはフリー・オブ・チャージ。
先週、紹介した根津のとんかつ屋には
ここを大いに見習ってほしい。

唐揚げの値段は基本的に時価。
その夜は580円・600円・630円・650円と
サイズにより、上下70円のレンジに4種類。
こんなに刻まなくてもよさそうなものだが・・・。
どれほどの差があるのか確かめたくて
650円と580円、ピンとキリをお願いしてみた。

ほどなく現れた唐揚げクンは
千切りキャベツの上に鎮座ましましている。
大きさはピンもキリもあまり変わらないように見えた。
初心者には店のオバさんの解体サービスが施され、
割る前の割り箸を手羽と胸の間に突っと刺し、
足首を半紙でくるんでグリグリグリ。
瞬く間にバラバラ殺鳥事件の勃発だ。
バラケた鳥肉はキャベツの上に並べるのが作法。
余熱でキャベツをしんなりさせて
食べやすくするのが狙い。

もも肉・手羽先はジューシーだが胸肉はパサツいた。
あばら骨の奥に潜む背肝がうまい。
ビール1本、鳥皮生姜煮、若鶏2人前、
きゅうりと白菜の新香、締めて金2170円也。
ローストチキンにかないはしないが
この値段なら下級社会に属していても食べられる。
何かの事情で経済的苦境に直面している方も
たまには「鳥房」のフライドチキンで
つかの間のクリスマス気分にひたりましょう。


【本日の店舗紹介】
「鳥房」
 東京都葛飾区立石7-1-3
 03-3697-7025

 
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2008年7月11日(金)

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