「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第532回
恐怖の鴨汁せいろ(その1)

江戸川区・江戸川に太くて固くて
ものスゴい量の鴨汁せいろを
食べさせる日本そば屋があるという。
江戸川区は板橋区や足立区と並び、
これぞという店の見つからない厄介なエリア。
ひょっとすると次著「昼めしを食べる」に
使えるかもしれないと思いつつ、
ルンルン気分で出掛けて行った日曜日。

たどり着いたら本日休業の憂き目を見ないためにも
慎重を期してあらかじめ電話を入れる。
ついでに開店時間を確認すると11時45分の由。
もう1つついでに最寄り駅を訊ねると、
都営新宿線・一之江からは徒歩20分、
東西線・葛西からだと30分とのこと。
けっこう歩くことになるが、望むところだ。

気温30度を超える猛暑の中、
ひたすら歩いて到着したのは11時55分であった。
懸念した店先の行列も見当たらず、
しめしめと思いながら入店すると
あにはからんや、店内はいっぱいイッパイ。
おまけに中年のご夫婦が1組、
順番待ちの椅子に腰掛けているではないか。
おのれの見通しの甘さを反省しながら
その夫婦のお隣りに遠慮がちに座るのだった。

ザッと店内を見渡すと
入口そばに8人掛けの大テーブル。
あとは小上がりに6人掛けが4卓。
すべて掘りごたつ仕様になっており、
これならお年寄りの足腰に負担の掛かることもない。

一見は満席に見えたが、いざ落ち着いて見渡すと、
6人掛けを夫婦と小さな子ども2人の計4人、
実質的には計3人で占拠している卓も2つほどあり、
売り上げ効率はあまりよくなさそうだ。
これは週末のことだから仕方がない。
あとで判ったことながら
ここの大盛りは大変なボリュームなので
両親が大盛りを2人前注文すれば、
一家4人の食い扶持はそれだけで確保される。
待てよ、大盛り1人前でOKだろうな、きっと。

店内ではいろいろなそば商品が
展示即売されていて、そば焼酎・そばふりかけ・
韃靼そば茶などが、所狭しと並んでいる。
そばに含有されるルチンが健康食品として
注目されて以来、そばモノの売れ行きは伸びている。

順番をボケッと待っている間、
「大盛り鴨汁せいろ、お待たせしました!」
お運びのおネエさんの明るい声とともに
目の前の大テーブルに運ばれたそばが目に入った。
どじょうすくいにも使えそうな大きなザルに
てんこ盛りの太打ちそばの量たるや半端ではない。
おそらく町場の平均的日本そば屋の
3倍以上はあるものと推測される。

食べたら病気になりそうな恐怖の大盛りを
1人や2人ではなく、大勢の客たちが注文している。
江戸川区というのは食料事情が
逼迫(ひっぱく)しているのだろうか。
食べられるときに食べておかないと、
次またいつ、真っ当な食事にありつけるか
判らないのかもしれない。
いずれにしろ、この店の大盛りは普通じゃない。

           =つづく=

 
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2008年7月16日(水)

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