「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第534回
あの踏切事故から1年半

東武東上線・常盤台の踏切で
心の痛む踏切事故が起こってから約1年半。
友人と2人、夕闇迫る常盤台の駅に降り立つ。
見覚えのある北口のロータリーだが
そこを取り巻く店舗は様変わりしていた。
埼玉銀行はあさひ銀行を経て、りそな銀行に変わった。
とてもおいしいパンを製造していた
ベーカリー「マルコ」は跡形もない。
代わりに「マクドナルド」が赤い看板を見せている。

その日はそば屋と洋食屋の2軒の取材に赴いた。
1軒目は常盤台の「舟蕎山(せんきょうざん)」。
完熟トマトとなすのせいろと田舎そばをいただく。
珍しいトマトとなすのせいろは
イタリア料理にヒントを得て
バジルやオリーヴ油を使った冷たいそばかと思いきや、
実際はせいろと熱い汁がセパレートになったもの。
ちょうど鴨せいろの鴨汁が
トマトとなすの汁になったと思えばよい。
彩り鮮やかで食欲をそそる。
そばをくぐらせてほお張ると
熱のおかげで酸味を増したトマトが
その個性を最大限に主張して
想定外の美味に虚を突かれた思いがした。

駅に戻り、くだんの踏切を北から南に横切る。
踏切のたもとには亡くなられた警察官の方が
勤務していた交番がそのまま残っている。
線路沿いに歩いて環七の歩道橋を渡ると
目の前に母校の上板橋一中が暗闇にたたずんでいた。

今度は中板橋駅前の踏切を北に戻る。
2軒目は洋食店「キッチン亀」。
昭和35年創業の老舗だという。
中学・高校時代は中板橋に住んでいたが
踏切の反対側だったせいか、この店は記憶にない。

海老フライと海老クリームコロッケが付いた
へそハンバーグ定食とチーズ入りオムライスを注文。
へそハンバーグというのはハンバーグの真ん中に
へそがあるのではなく、毎年7月に中板橋の商店街で
催されるへそ踊りにちなんで名付けられたそうだ。

海老フライもコロッケも丁寧に作られており、
銀座の高級洋食店と比べても遜色ない。
ハンバーグのソースはほうれん草入りの
濃厚なバタークリーム仕立て。
ライスにこのソースを和えてやると、
下手なドリアよりずっとコク味があった。

帰り道、中板橋駅前の踏切に差し掛かると
池袋行き準急電車がけたたましく警笛を鳴らしながら
急ブレーキをかけたがすぐには停車できず、
踏切の真ん中に立ち往生。
付近にいた歩行者は何事かと一様に凍りつく。
駅からはカンテラをぶら下げた駅員が数人、
小走りにやってきて電車の車輪付近を照らし出す。
誰もが人身事故だと察して
目の前の惨劇を覚悟したのだったが
駅のホームでフラついていた酔っ払いは
間一髪で無事、命拾いをしたのであった。


【本日の店舗紹介】その1
「舟蕎山」
 板橋区常盤台2-1-17
 03-5392-5733

【本日の店舗紹介】その2
「キッチン亀」
 板橋区中板橋18-11
 03-3964-1192

 
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2008年7月18日(金)

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