「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第535回
こぶちゃんオススメもやしそば

林家こぶ平あらため、九代目林家正蔵。
人懐っこい人柄からいつまでたっても
こぶちゃんのイメージが優先してしまう。
根岸の里の出身だから、
ほど近い浅草や谷中で食べ歩いているらしい。

数ヶ月ほど前に銀座の書店で
「噺家いきつけの安くて旨い乙な店」
(大友浩著・ワニマガジン社)
なる一冊を見つけ、即刻購入して楽しんだ。
その本にこぶちゃんが
「ここはもうほんとに、奇跡的な店ですよ」と
ぞっこんの中華料理店が紹介されている。

店の名は「一寸亭(ちょっとてい)」。
前著「J.C.オカザワの古き良き東京を食べる」では
惜しくも二百選入りを逃したのだが
「こんなときにはこの一軒」に
カテゴライズして収録した。
その稿をかいつまんで転載すると

もやしそばが食べたくなったら、迷わずここ。
うま煮ライスが旨そうでも、それは再訪時に。
もやしのほかに豚バラ肉の小間切れが散見され、
下に隠れた中太ちぢれ麺はいかにももやしそば向き。
化調は感じても醤油スープが悪くない。

確かに名物のもやしそばはけっこうだ。
ところが町の中華屋としては基本の
ラーメンと餃子のデキが芳しいものではなく、
二百選もれの帰結を招いたのだった。

こぶちゃんももやしそばを絶賛しているが
同様にベタほめなのがチキンライス。
「下町のチキンライスはこうだろ!」って
言ってるチキンライスなのだそうだ。
「上品ぶるなよ!」とも。

なかなかこれぞというチキンライスには
お目に掛かったことがないが
そうまで言われては食べずにはいられない。
数日後にはノコノコと出向いて行った。
オムライス好きの友だちを誘い、
日暮里駅で待ち合わせ。
オムライスが好きなヤツなら
チキンライスも好きだろうと踏んでのことだ。

夕焼けだんだんを降り、
そのまま真っ直ぐ谷中銀座を進んで
ほどなく左折したところに店はある。
およそ1年ぶりの訪問だ。
もやしそばも注文したが
その日は心なしか豚バラ肉が大量に入っていた。
化調強めの味付けは変わらず。

さて、くだんのチキンライス。
鳥の胸肉と玉子が入って、これは親子丼風ですな。
味が濃くて下世話な感じがするが
本当に上品ぶったところがない。
チャーハンのようにまん丸ではなく、
楕円形にかたどられているのも懐かしい。
銀座「萬福」のポークライスを偲ばせるものがあり、
一度食べておいて損はない佳品である。


【本日の店舗紹介】
「一寸亭」
 東京都台東区谷中3-11-7
 03-3823-7990

 
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2008年7月21日(月)

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