「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第538回
日本一のかき氷

浅草の六区ブロードウェイを北に向かって歩くと、
そのまま浅草最古のアーケード・ひさご通りに続く。
この通りには、詩人・高村光太郎が
「米久の晩餐」で

八月の夜は今米久にもうもうと煮え立つ。
鍵なりにあけひろげた二つの大部屋に
べつたり座り込んだ生きものの海
バットの黄塵と人間くさい流電とのうずまきのなか、
右もひだりも前もうしろも、
顔とシャッポと鉢巻と裸と怒号と喧噪と、
麦酒瓶と徳利と箸とコップと猪口と、
こげつく牛肉とぼろぼろな南京豆と

と詠った、すき焼きの「米久」が
昔ながらのたたずまいを見せている。
「米久」を左に見ながら、なおも先に進むと
右手にあるのが甘味処「初音茶屋」。
普段はお汁粉やあんみつや雑煮を売る店だ。

あんみつもさることながら、
この店の最大の魅力は夏場のかき氷。
文句のつけようがないすばらしさに
日本一の折り紙を付けたい。
奥多摩だか秩父だかにも名店があるそうだが
かき氷のためだけに、そんなに遠くまで行かれない。

かき氷にもいろいろあって
われわれが子どもの頃に食べていたそれと
「初音茶屋」のそれとは
まったくのベツモノと言ってよい。
めったなことで他店ではかき氷を口にしないのは
元来、それほど好きじゃないし、
暑い日に食べると、食後にダルくなるから。
あれはいったいどうしてかなぁ。
一休みして、さあ出掛けようと立ち上がると
身体が異常に重いことに気づいて驚く。

それでもこの店のかき氷は看過できない。
すでに夏休みに入った海の日。
今年初めて「初音茶屋」を訪れた。
ヨソでは見かけることのない氷コーヒーを注文。
甘め・苦めのチョイスが可能で、苦めをお願い。
コーヒー嫌いのJ.C.が舌鼓を打つくらいだから
コーヒー党は泣いて喜ぶのではあるまいか。

新雪のようにサラサラの氷は
冷凍庫から出してすぐに削ってはダメで
必ず一拍おいて氷に汗をかかせてからでないと
柔らかいこの感触は絶対に生まれないそうだ。
氷は舌に乗せた瞬間に、音もなく消えてゆく。
残るは快感ともいえる余韻だ。

梅雨が明け、いよいよ大好きなシーズンの到来。
今年の夏には思いっきり暑くなってもらいたい。
かき氷は猛暑の中でやるのが何よりだ。
夏がゆく前に、あと二度ほどは
ひさご通りにやって来そうな予感がする。
汗だくならば2杯は問題ないから
氷水(スイ)と氷宇治をやっつけたいと思う。


【本日の店舗紹介】
「初音茶屋」
 東京都台東区浅草2-23-3
 03-3844-7658

 
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2008年7月24日(木)

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