「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第540
三越本店にもの申す(その2)

日本橋三越本店の本館の「カフェウィーン」で
ヴィーナ・ファシェルテスという
ウィーン風ハンバーグステーキを食べている。
東京のベストランチ二百選の有力な候補として
その味の再審査に及んでいるわけだ。

銀色のトレーに乗せられて料理が運ばれてきた。
料理の出来上がりと一緒にオーストリア産ビール、
カイザー(皇帝)の小瓶も頼んである。
皿の上には中ぶりサイズのファシェルテス。
上にはこんもりとフライドオニオンが盛られ、
肉塊のふもとを取り巻くように焦げ茶色のソース。
ガルニテュール(付合わせ)は
ブロッコリー・にんじん・スパッツェルの3種。
聞きなれないスパッツェルというのは
マカロニとニョッキの中間みたいなパスタのこと。

見た目は以前食べたときと寸分の狂いもない。
サイドに添えられたパンは好物のカイザーゼンメル。
けしの実をまとったロールパンである。
最近のバター不足にもかかわらず、
バターがちゃんと用意されていた。
やはりパンにはバターがないと、
クリープのないコーヒーより味気ない。

グラスにビールを注いで準備完了。
フォークのサイドでファシェルテスを押し切り、
今度はフォークの先に突き刺して口に運ぶ。
「ありゃ!ん?」――何だかおかしい。
どこか出来合いっぽいというか、手作り感がない。
表面より内部のほうが熱いということは
マイクロウェーヴでチンしたね、これはきっと。
肉汁少なく、つなぎが多く、ハンバーグというよりも
肉団子の親方みたいな印象だ。

ガルニのブロッコリーが冷たい。
にんじんはやや温度が高いが、それでもぬるい。
しかも砂糖の使いすぎでずいぶん甘ったるい。
スパッツェルはくっつき合ってるのも散見された。
いったいどうしたことだろう。
ここでいったん気を取り直し、
ちぎったゼンメルの小片にバターを一塗り。
パンの内側もかなり熱いが、これはおいしい。

すべてきれいに食べ終えたが何かすっきりとしない。
不満が心に降り積もっている。
この店では食事よりも喫茶の客のほうが多いと思われる。
ザッハートルテなどのケーキ類は
作り置いたものを客の注文に応じてサーヴすれば
何の問題もないが料理はそう簡単にはいかない。

たまたま午後の遅い時間に訪れたので
回転率のよいランチタイムとは
厨房の段取りも違っていようが
天下の三越本店で出される料理としては
いささかお粗末であった。

結果として次作の「昼めしを食べる」では
ベストランチ二百選からすべり落ちただけでなく、
二百選にあと一歩の50軒からももれてしまった。
それにしても短い間に料理の質が
こんなにも激変するものだろうか。やれやれ。


【本日の店舗紹介】
「カフェウィーン」
 中央区日本橋室町1-4-1三越本店本館2F
 03-3274-8835

 
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2008年7月28日(月)

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