「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第552回
「キャンティ西麻布店」に初見参(その2)

東京のイタリアンのさきがけといわれる
「キャンティ」の西麻布店に来ている。
<飲み・食い・歌い仲間>が4人揃って
今宵は大いに楽しもうという寸法だ。
飯倉の本店には何度かおジャマしているが
こちらは初めての訪問につき、とても楽しみだ。

レジスターの脇に置かれた
小さなパンフレットには

キャンティは―
 子供の心をもつ大人たちと
 大人の心をもつ子供たちのために―
          つくられた場所です

という、よく意味の判らないキャッチとともに
開業が1960年で、創業者は長いヨーロッパでの生活から得た
食文化の豊かさを本物のかたちで再現しよう
と作った店である
ことや
この店がこだわっているのは
イタリア料理ではなく、
キャンティ料理である
ことなどが記されている。

そうは言われても、それほど独創的な料理が
ズラリと並んでいるわけでもなく、
目立つのは開業以来のバジリコのスパゲッティくらい。
フレッシュのバジリコが手に入らない時代に
大葉と乾燥バジリコで仕上げた苦心の作だが
あの時代、イタリア料理を名乗る店では
さして珍しいものではなかった。
それが今、本格的なイタリアンが日本全国を席巻して
逆に大葉を使うのは「にっぽんのスパゲッティ」を
ウリにする店のほかはなくなった。
真っ当なパスタを提供する店でありながら、
いまだにこのレシピを踏襲しているのは
この「キャンティ」だけかもしれない。

スーパードライの小瓶を飲みながら
目移りを余儀なくされるアンティ(前菜)を選ぶ。
揃いも揃って、いずれ劣らずの食いしん坊だから
あれも食べたい、これも食べたいと
各自の皿は見る見る料理で埋めつくされてゆく。
これをまたお互いにつつきあったりするから
何種類の料理を味わったのか、思い出すのが一苦労。

これは客ばかりでなく、サービス担当にとっても
覚えきれるものではないようだ。
もう1人、サービス係のうしろに立っているおニイさんは
アシスタントか見習い中の新人と思いきや、
実はカウント係だった。
要するに料理を取り分ける人間と
伝票に付ける人間が2人で1チームなのだった。

したがってテーブルの脇に立つカウント係に
飲みものの追加を頼んだりしても
まず取り合ってはもらえない。
頭の中とペン先は
目まぐるしく動いているのだから
さもありなん。

これは致し方ないことで
計算違いはあとでトラブルのもとになる。
けしてスマートなスタイルとは言えないが、
明瞭会計をキッチリ守るには
必要不可欠なシステムなのだろう。

           =つづく=

 
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2008年8月13日(水)

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