「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第556回
小江戸・佐原を歩く(その1)

かねがね行ってみたいと思っていながら
なぜか機会に恵まれなかった北総の水郷・佐原。
お盆休みにやっと訪れることができた。
佐原の町の存在を初めて意識したのは
紅白歌合戦における三波春夫の「大利根無情」。
調べてみると1969年の大晦日のことだった。

♪ 利根の 利根の川風 よしきりの
   声が冷たく 身をせめる これが浮世か
   見てはいけない 西空見れば ♪

で始まる不朽の名曲だが
一番と二番の間の科白(せりふ)にも心惹かれた。

「佐原囃子(ばやし)が聴こえてくらぁ
 想い出すなァ・・、
 御玉ヶ池の千葉道場か、うふふ・・・。
 平手造酒も、今じゃやくざの用心棒、
 人生裏街道の枯れ落葉か」

平手造酒(みき)の独白にコロリと参ってしまった。
こういう曲は浪曲でノドを鍛えた
三波春夫の独壇場なのだが
ここに出てくる佐原囃子がずっと耳に残っていた。

JR成田駅で成田線に乗り換え、
佐原に到着したのは11時過ぎ。
お盆なのでその日は
夜に燈籠流しのイベントが控えていた。
出掛ける前にあらかじめ目星を付けておいた
食事処「桶松」に直行する。
どんぶりモノが評判の食堂である。

ガランとした店内には先客がいない。
福原愛と香港選手が団体戦を戦っている
TVの前に陣を取り、品書きを手に目を通す。
かつ丼・天丼・親子丼の三大どんぶりが並び、
かつ丼と天丼にはそれぞれ(上)があった。
何でもここの上天丼は
ごはんの中にも天ぷらが潜んでいるそうで
あたかもうなぎの中入れ丼の如し。
注文を受けてからカツを揚げるかつ丼が
一番人気らしいが、もの珍しさに惹かれ、
上天丼(1000円)に白羽の矢を立てた。

東京近郊とはいえ、そこは旅空の下、
心身ともにリラックスするためにも
ビールを頼まずにはいられない。
現れ出でたるアサヒの大瓶を
トクトクトクとグラスに注ぎ、
一気に飲み干して「プッファーッ!」。
いやはや、たまりませんな。

いきなり2セット落とした愛ちゃんが挽回して
3セットを連取した頃、上天丼が登場。
表面を飾るのは、海老2本・茄子・しし唐だ。
カラリ揚げ切り、丼つゆを上から掛けるタイプ。
3分の1ほど食べ進み、ごはんの下をのぞくと、
海老がもう1本隠れていた。
ハハ〜ン、こいつはカリカリとシットリの
2種類のコロモを食べさせようという魂胆だな。

このとき静寂を破って
入店してきたのはあらくれ男7人組。
何事かと思うと、どうやら今宵のイベントのために
送られてきたTVの撮影班らしい。
背中合わせの席に座られ、悪い予感がする。
はたして予感は的中し、騒音だけは耐え忍んだものの、
ハンパでない煙草の煙りにあえなくKOされちゃった。

             =つづく=

【本日の店舗紹介】
「桶松」
 千葉県香取市佐原イ525−1
 0478 -52-3188

 
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2008年8月19日(火)

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