「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第558回
小江戸・佐原を歩く(その3)

北総の水郷・佐原の町に来ている。
夕食時、うなぎ屋「山田」で一席を占めている。
ほかに目ぼしい店が見つからず、
入ってはみたものの、
何となくイヤな予感がしていたら
案の定、一悶着あった。

女将かな?お運びの女性がヤケにとげとげしい。
17時5分前に入店すると、
「注文は17時からですから、座って待ってて下さい」
とのご達しだ。
まぁ、それはそれでいいでしょう。

5分待ってまずは瓶ビール。
キリンラガーの中瓶と
お通しの枝豆が運ばれたときに
うな丼の並(1700円)をお願いする。
すると驚くなかれ、彼女の発した言葉は
「並は質がオチますが・・・。」
いきなりこうやられた。

J.C.はおそらく、都内のうなぎ屋だけでも
100軒は訪れているだろう。
そのほとんどの店で、並というか梅というか、
もっとも廉価なうな丼・うな重を注文してきた。
ところが、いまだかって並のうなぎの質云々を
語られたことはただの1度もないのであった。
通常はどの店でも質の違いではなく、
サイズの違いであることを明確に謳っているものだ。

ああいう言葉をサラリと聞き流せないのが
まだまだ人生修行の足りないところ。
何も考えず、ほぼ反射的に
「どう、質がオチるんですか?」と聞き返していた。
一瞬、言葉に詰まった彼女は
「そっ、そこまではちょっと」
「ハアッ?」
「とにかく私たちはそのように言うように
 言われてますから・・・。」
こんな意地悪な客は想定の範囲外だったらしい。
「それじゃ職人さんに聞いてきてください」

2本目のビールと一緒に新香を頼む。
ここまで回答はまだナシ。
その後、20分ほど経過して
そろそろ催促しようかと思った矢先に
きゅうりと大根のぬか漬けとたくあんを
盛合わせた鉢が登場した。
すると立て続けにうな丼も登場。
見ればうな丼の脇の小さな新香もそっくり同じ内容だ。
芸もなければ、心配りもない仕打ちとはまさにこのこと。

うな丼は小ぶりのうなぎが1尾半付け。
もっとも好むサイズではあったが
いかんせん焼きすぎでタレも甘く濃く、
東京の下町の名店の味を
知ってしまった舌にはまったく合わない。
江戸と小江戸の力量差はうなぎにも色濃く出ている。
加えてごはんが柔らかく、いいことは何もなかった。

食べ終える頃、テーブルにやって来た彼女曰く、
「並は柔らかさと脂のノリがオチるんです!」
とのご回答。
「ふ〜ん、でもそうじゃないでしょ、
 並は店の売り上げがオチるんでしょ?」
口には出さずに言葉を飲み込み、
失望を隠しながらのお勘定と相成りましたとサ。


【本日の店舗紹介】
「山田」
 千葉県香取市佐原イ457
 0478-52-4375

 
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2008年8月21日(木)

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