「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第564回
パリから帰って来た男(その2)

パリから里帰り中の料理人、H大クンと
その恋人のM由子嬢と一緒に
深夜の「やまじょう」になだれこんだ。
3軒目につき、ほどなく解散となったが
翌週にはこの店で一大イベントが待っている。
水・木・金曜の3日間、
“H大シェフのフレンチナイト”と称して
貸切り営業を敢行する予定なのである。

われわれが訪れたのは初日の水曜日のこと。
カウンターのみの小体な店舗につき、
補助椅子を使った上で
目一杯座っても10名様がマキシマム。
総勢10名が集結して満席と相成った。

当夜のメンバーは昨年9月に
欧州旅行をともにした面々が中心。
オサワガセストならぬハーピストのIア女史。
驚いたことにその後、勤め先を辞めて
「やまじょう」に就職しちゃったMり嬢。
昨年末の大病から復活を遂げたS崎御大。
当コラムに登場過多のせいか、
常にくたびれ気味のK石クン。
そういった連中が客席に陣を取った。

スタッフはシェフがH大クンで
スーシェフがM由子嬢、
メートルDは「やまじょう」の女将にして
M由子嬢の母君のI田M子さん。
何とあのとき参加した10名のうち8名までが
至福の時空間をともにしたことになる。

ミシュラン三つ星に輝くホテル・ムーリスの
ダイニングから凱旋したH大シェフの
手になるフルコースが、いよいよ始まった。
まずは当夜のメニューから記そう。

◎ワイン
  ベッソン・シャブリ‘06年
  ガロピエール・ムルソー レ・シュパリエ‘04年
  ドミニク・ローラン ニュイ・サン・ジョルジュ‘05年

◎料理
  ヒイカの鮪赤身タルタル詰め
  生岩牡蠣のパンプルムース・ソース
  平貝のマリネ 梅のジュレと木苺のヴィネグレット
  鱈場蟹のサラダ キャロット・ジュリエンヌ添え
  冷製トマトスープ にんにく風味
  鱗を付けたままの甘鯛のポワレ 万願寺唐辛子添え
  栃木牛アントルコートのポワレ 赤ワインソース
  白桃のコンポートと白桃のソルベのアンサンブル

ヒイカというのは、ジンドウイカでも剣先イカでも
真イカ(スルメイカ)でも、
とにかくイカ類の赤ん坊の総称。
江戸前鮨によく使われる小ヤリイカよりも小さい。
これに鮪の赤身のタルタルが詰まっていた。
赤ワインのヴィネグレットに
醤油・生姜・わさびの和風トリオが加わり、
日仏友好の風味が立ち上がる。
食味がよいからもっと食べたいが、
全8皿のフルコースにはこれが適量であった。

J.C.は濃厚な岩牡蠣を好まないのだが
さわやかなソースのおかげでおいしくいただけた。
ちなみにパンプルムースというのは
グレープフルーツのこと。
重ねてちなみに丸くてデッカい柑橘類を
なぜグレープフルーツと呼ぶのかご存知ですか?
正解はぶどうの房のように
鈴なりに実をつけるからなのです。

            =つづく=

 
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2008年8月29日(金)

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