「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第563回
パリから帰って来た男(その1)

昨年の9月にスロベニア・イタリア・
フランスの3カ国を総勢9人で周遊した際に
ヴェネツィアで合流して
その後、トリノ・リヨンと一緒に行動をともにし、
いったん別れたあと、パリで再開したのが
パリのホテル・ムーリスで活躍する
日本人の料理人、H大クン(第325回参照)。
神保町の行きつけの店「やまじょう」の
一人娘、M由子の恋人なのである。

彼が2年ぶりの里帰りで8月上旬に帰国した。
リヨンやパリでお世話になったお礼にと
盟友のK石クンと図って、若きカップルの2人に
江戸前鮨を振舞おうということになった。
訪れたのは浅草の名店「鮨よしだ」である。

4名の来店なのでムリをお願いし、
カドカドの席を用意してもらった。
横並びだと、端と端に座った二人が
その夜は最初から最後まで
他人の関係になってしまうのだ。

「逢う時はいつも他人」(1960年)なる映画があったが
あの作品のキム・ノヴァクは素敵でしたね。
タイトルもすばらしかった。
原題は「Strangers When We Meet」。
勘の鋭い人ならこれだけでW不倫であることが
容易に推測されますね。
おっと、ハナシがついつい脇にそれるのが
J.C.の悪いクセ、元に戻しましょう。

「よしだ」の親方の手さばき・包丁さばきが
じっくりと見えるように
H大には正面の席ではなく、
サイドに陣取ってもらった。
鮨に目のない若い二人は親方のオススメに従い、
と言うより、ほとんどおまかせで
思う存分、楽しんでくれたのではなかったかな。

J.C.は星鰈(ほしがれい)の昆布〆と毛蟹で始め、
すずき・秋刀魚・かつお・〆さばのほか、
子どもの頃に嫌いだったのが
歳とともに大好物となった鯨ベーコンで
スーパードライと芋焼酎の赤霧島を
ガンガンとやりました。

にぎりに移ってからは
新子・小肌・真子鰈・赤貝・車海老・
煮あさり・酢あじ・赤身づけ・穴子・
中とろ・海胆・玉子と、この夜は少々食べ過ぎだ。
「よしだ」のサカナとシゴトに関しては
このコラムで何度も紹介してきたので
今さら言うことは何もない。

一同、満足したあとはディープな浅草を
味わってもらおうと、大衆酒場だ。
カウンター席のほかに
オープンエアー・テーブルのある「正ちゃん」に向かう。
ねじり鉢巻の正ちゃんが陽気に振舞うこの店で
必ず飲むのは黒ホッピーだ。
その合いの手に、牛すじ煮込みと白滝煮をもらう。

浅草の夜も更け、普通の人なら家路を急ぐ頃、
まずはお疲れの見え始めたK石クンに手を振って
弾みをつけたわれら3人はカップルの本拠、
「やまじょう」へと繰り出したのであった。
しっかし、よう飲むわ、ホンマ。

            =つづく=

【本日の店舗紹介】
「鮨よしだ」
 東京都台東区浅草2-1-14
 03-3845-7557

「正ちゃん」
 東京都台東区浅草2-7-13
 03-3841-3673

 
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2008年8月28日(木)

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