第570回
駅から遠いが極上の鮨(その2)
変人・オーガスタと二人で
本駒込の「ゆうひ鮨」のつけ台に陣を取っている。
この界隈ではピカイチの江戸前鮨を
食べさせてくれるのがこの店だ。
そうそう、オーガスタの変わった嗜好であった。
この人はステーキも好物なのだが、
なぜか高級和牛の霜降りステーキを好まず、
赤身と脂身がハッキリ分かれた、いわば
アメリカのステーキみたいなのが大のお気に入り。
そしてその脂身に目が無いのだと言う。
J.C.も日頃から霜降り牛は避けているが
脂身よりは赤身がいいものね。
オーガスタは日本人には
数少ない特異な嗜好の持ち主と言えよう。
とにかく、サッポロ黒ラベルの中ジョッキで乾杯。
サッポロのエビスは苦手だが
黒ラベルは好きな銘柄である。
立て続けに2杯飲んでしまった。
目の前にはまだ、突き出しのもずく酢しか出ていない。
これには毛蟹のほぐし身が少々入っている。
最初にもらったのは当店名物のゆで蛸。
粗塩と酢橘(すだち)で味わう。
いつ食べても花丸ジルシの優れた蛸である。
産地を訊き忘れたが
おそらく三浦半島の佐島近辺だと思われる。
蛸においては東の佐島、西の明石が双璧だ。
宮崎は日南市の京屋酒造の手になる
芋焼酎・京屋かんろのオンザロックに切り替えた。
宮崎紅寿芋使用の名品は
爽快なあと味を残してのどをすべり落ちて行った。
平目の昆布〆はエンガワ付き。
おろし立ての本わさびを乗せて口元に運ぶ。
う〜ん、美味である。甘露である。
でも、蛸と比べると、蛸に軍配かしら。
京屋かんろも2杯目となり、
ここで辛子酢味噌ものを2品。
青柳(バカ貝)と墨いかのゲソだ。
青柳は千葉県の浦安産だろう。
浦安と早稲田は馬鹿で蔵を建て
読者の方々はこの川柳をご存知ですか?
浦安の漁民はバカ貝で
早稲田の農民は茗荷(みょうが)で
それぞれ蔵を建てたというワケです。
早稲田の茗荷って何だ?
と思われる方もいるでしょう。
昔からの言い伝えで
茗荷を食べ過ぎるとバカになるんですって。
9カンほどいただいたにぎりの特筆モノは
墨いか・中とろ・生海胆の3品。
奇人・オーガスタは
新子・赤貝・中とろが気に入りの様子。
気になる支払いはお二人様金19600円也。
予想を若干下回る金額には大いに納得。
「五丁目の夕日」の夜は
こうして更けていったのでした。
【本日の店舗紹介】
「ゆうひ鮨」
東京都文京区本駒込5-42-7
03-3827-0478
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