「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第572回
紘子と涼子のピアノを聴く(その2)

牛久の文化ホールで中村紘子さんの
ピアノに耳を傾けたあと、
シャトーカミヤの「レストラン キャノン」で夕食。
そう言えばこのほど、シャトー内の3棟の建造物が
国の重要文化財に指定されたばかり。
上野から快速に乗れば、50分ほどで到着する牛久。
この機会にぜひ、一訪をおすすめしたい。

食事はシーザースサラダを経てメインコースへ。
大洗港に揚がったすずきのグリエか
骨付き仔羊のロティかで迷ったが
赤ワインのために香鼠(こうざん)ワインの
ソースが添えられる仔羊をチョイス。
香鼠ワインというのはポートに似た
酒精強化ワインで漢方薬や蜂蜜を加えたワイン。
香鼠の名前の由来はシャトーの生みの親、
神谷傳兵衛の父にして俳人だった兵助の雅号である。

3本付きの仔羊は美味にして食べ応えじゅうぶん。
隣りのDニク君に1本差し上げ、
代わりに彼の鴨のコンフィを少々頂戴すると、
これがまた滋味にあふれた一品。
ここ3年間、毎年おジャマしているが、
年を追うごとに料理の水準が向上している。

20時半に帰宅。
21時に始まる二夜連続ドラマ「氷の華」を観る。
冒頭シーンが映画「砂の器」を想起させるもので
バックに流れる音楽までテーマ曲の「宿命」にそっくり。
おまけに米倉涼子がピアノを弾いているではないか。
こんなところまで「砂の器」と瓜二つ。
ここで思い出したのが市川海老蔵(当時は新之助)と
米倉涼子が初共演した大河ドラマの「宮本武蔵」。
5年前の作品だが、このドラマもスタート当時、
黒澤明の「七人の侍」のパクリではないかと
大いに物議をかもしたものだった。

結局、二夜連続で「氷の華」を観たのだが
とてもよくできたドラマだと感心した。
何と言っても米倉涼子の存在感が圧倒的。
好き嫌いは別として、現在日本の女優陣の中に
これだけの美貌とスケールを兼ね備えた
人はほかにいないのではないか。
「黒革の手帖」など、舞台も見てきたが
今回、初めて彼女の魅力に開眼した思いがする。
加えて彼女の着たエレガントな衣装もすばらしかった。

警部役の舘ひろしもよかったし、
相方のともさかりえも硬いドラマの緩衝材として好演。
米倉の夫役の堺雅人は好きな俳優だが
彼に関しては「篤姫」の徳川家定のほうがよかった。

ただ、このドラマには致命的とも言える欠陥が一つ。
起承転結の「承転結」は実に巧みなのだが
肝心の「起」に大きな難点がある。
詳しくは描かれていないのだが
知的にして緻密な犯罪を完遂させる主人公の
初めの第一歩がいただけない。

好きなオトコを手に入れるために
彼とその恋人の仲を二通の偽手紙を
それぞれに送って引き裂くのだが
愛し合う恋人同士が第三者からの偽手紙に
コロリと騙され、別れてしまうものだろうか。
しかも二人揃って何の疑いもなく・・・。
付け文しか連絡手段のなかった江戸時代じゃあるまいし、
携帯電話やメールが普及している今の世の中に
そんな陳腐なことなど、絶対にあるハズがない。
犯行の手口としてはあまりにもおざなりに過ぎる。

ドラマの進行中、ずっと気になって仕方なく、
シラケるので、努めて思い出さないようにしていた。
そしてラストシーンのコンサート会場。
ピアニストの米倉涼子のもとに
警部と刑事がペアで現れる。
これって丸っきり「砂の器」じゃないの?


【本日の店舗紹介】
「レストラン キャノン」
 茨城県牛久市中央3-20-1シャトーカミヤ内
 029-871-7023

 
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2008年9月10日(水)

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