第576回
スポーツよもやま話(その2)
大相撲の若ノ鵬問題のつづきである。
ソフトドラッグである大麻は
ハードドラッグとしてのヘロインや覚醒剤とは
その性質をまったく異にするものである。
オランダで大麻が合法化されていることは
巷間、よく知られているところだ。
P.マッカートニーが成田で入国を拒否されたり、
クリントン元大統領が若い頃に吸引を認めたのも
みな大麻のことじゃなかったかしら。
日本の法律でも覚醒剤取締法には
その理由として覚醒剤がもたらす弊害が
明記されているが、大麻にはそれがない。
だから大目に見ろとは言わないまでも
飲酒によるアルコールの摂取などに比べ、
大麻吸引が暴力や犯罪につながる事例が
極端に少ないこともまた事実。
中近東の禁酒国家から見れば、
飲酒のほうがはるかに罪深き犯罪なのだ。
大麻と覚醒剤の違いを述べても
若ノ鵬問題の解決にはならないので視点を変えたい。
日本のプロスポーツ界でもっとも選手寿命の短いのは
おそらく大相撲であろう。あとはボクシングだろうか。
これがアメリカならばフットボールということになる。
それだけ相撲は肉体的に過酷なスポーツということだ。
もしプロ野球の選手やプロゴルファーが大麻を吸って
しかも初犯で、永久追放になるものだろうか。
日本の国技の大相撲は特別だなんて意見は
味噌汁で顔を洗い直してから言ってほしい。
名力士でも全盛期が10年にも満たない角界で
たった一度の過ちを犯した異国の若者を
こうまで断罪しなければならない理由がどこにあろう。
少なくとも今回の若ノ鵬の罪状は
飲酒運転よりはずっと軽いものである。
今回のことはうわべは親切なようでいて
いざとなると、一億総出で非情に徹する日本人の特性が
顕著に表れた好例ではなかろうか。
「罪を憎んで人を憎まず」なんてことわざは
ありゃ、いったいどこの国のたわ言だい?
復帰を熱望していて、裁判も辞さないという裏には
給料や在留許可のことも大いにあるだろう。
それはそれとして、彼には半年か1年間、
肉体労働の奉仕活動でもさせて
復帰できる道を開いてやるくらいの度量が
協会にも相撲関係者にもマスコミにも世論にもほしい。
ことのついでにかまびすしい自称評論家の方々に
申し上げておきたいが、
力士にそこまで冷酷になれるのなら
芸能界の芸能人にもそうあってほしいね。
芸能人には再犯の例があとを絶たないし、
大女優のバカ息子の例もある。
芸能界は薬物や暴力に対して
あまりにも甘すぎるんじゃございませんか?
評論家の方々には常にフェアであっていただきたい。
最後に柔道の石井慧。
マスコミは彼の発言に大喜びだが
久々に珍しいのが出てきたという感じ。
独特のギャグにしても野球のピッチャーで言えば、
出どころが見えづらい球をポンポンと放ってくる。
一本勝ちにこだわらないのもいい。
もちろん、こだわる谷本歩美ちゃんもいいけれど、
やはり日本柔道は勝ってナンボでしょう。
俊輔のクリーンシュートも遠藤のコロコロPKも
1点は1点、得点に色が付いているわけじゃないもの。
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