「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第581回
熱海の老舗の玉手箱

2年半ぶりで熱海を訪れた。
東京駅から快速電車のアクティーに乗ってきた。
次著「昼めしを食べる」のゲラを
連れてきているので、車窓を眺めるヒマはない。
盛んにペンを走らせ、「赤」を入れていた。
この日は熱海で昼食を取ったら湯河原へ戻り、
温泉にはつからないまでも市内を散策し、
その後、小田原で一杯やるつもり。

熱海駅から駅前のアーケードを抜けて、
道なりに坂を下っていけば、
10分ほどで街の中心部に達することができる。
坂があり、起伏のある街は歩いていて楽しい。
小田原はさほどではないが
熱海にはスロープの魅力がある。
横浜や神戸の街だって、坂が生命線だろう。
アメリカ西海岸でも、サンフランシスコの美しさは
ロスアンジェルスの追随を許すものではなく、
これもすべてスロープの賜物だ。

この日は以前に訪れて気に入った「一番軒」で
ラーメンと餃子を食べる予定であった。
ところが出掛けにパソコンをいじっていたら
1931年創業の「幸華」なる中華料理店の
玉手箱と名付けられた弁当が出色のデキとあった。
千円札1枚で10種類ほどの料理が味わえるという。

今までネットのカキコミには何度も痛い思いをしてきた。
それでも70年余の歴史には心が騒いでしまう。
J.C.の弱点はレトロで、たとえダメだったとしても
自分より年上の店なら、あきらめが付くものと腹を決めた。
「幸華」の2階に通されると、客は誰もいない。
毛筆で書かれた壁の菜単(メニュー)がなかなかに
風格を感じさせ、いよいよ期待が高まる。

 油淋鶏 古老肉 東坡肉 干焼蝦仁
 芙蓉蟹 酸辣湯 什錦湯麺 伊府湯麺
 上海炒麺 星州炒米 揚州炒飯 青菜炒

などが並んでいた。
俳優の橋爪功さんの色紙も飾られている。

登場した玉手箱には  
芙蓉叉焼・茄子揚げ煮・海老湯葉揚げ・揚げ豆腐・
東坡肉・白切鶏・玉子焼き・ごはんが詰め込まれている。
野菜スープとマンゴープリンが付いて計10品。
ご丁寧にデザートは杏仁豆腐と胡麻豆腐も選べる。

こいつは本当にお食べ得だわいと
喜び勇んでさっそく芙蓉叉焼に箸を付けた。
ところがこれが、とてつもなく塩辛い。
塩の分量を間違えたかと思ったほどだ。
ほかの料理も塩辛かったり、甘かったりと
すべてにおいて味付けが濃い。
野菜スープは化調たっぷりで、
鉄腕アトムじゃないが、十万馬力の化学の子。
ごはんも半分残させていただいてソッと蓋を閉じる。

サッサと会計を済ませ、そのまま向かったのが
徒歩5分の距離にある「一番軒」。
なぜか今回は女性2人で切り盛りしていた。
思い出のラーメンは見覚えのある濃い色の醤油スープに
ちぢれた細麺とバラチャーシューとシナチクと
焼き海苔ときざみ小ねぎが浮き沈み。
美味しかったが前回ほどの感慨はない。
これも不デキな玉手箱を食べたせいだろう。
西城秀樹じゃないが、不デキ感激とはいかなかった。


【本日の店舗紹介】
「幸華」
 静岡県熱海市渚町12-11
 0557-81-3901

「一番軒」
 静岡県熱海市銀座町1-19
 0557-81-5607

 
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2008年9月23日(火)

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