「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第583回
「室町砂場」VS「赤坂砂場」(その1)

東京における日本そば屋を分別すると
おおむね3〜4派に分かれようか。
藪系・砂場系・更科系、加えて一茶庵系だろうか。

J.C.の使い分けは酒を飲む夜には藪、
昼どきにそばを楽しむ場合は砂場、
たまさか、変わりそばが食べたくなると
更科か一茶庵に赴くことになる。
もちろん砂場で酒を飲むし、
一茶庵で鴨南蛮を食べたりもする。

ここ十数年、都内にはモダンでシックな
新しいタイプのそば店が急速に増えた。
若い世代に属する職人さんが独立して
自分で打ったそばをウリにする店が多いが
どこか寒々とした雰囲気がそば屋らしくなく、
居心地がよくないというか、尻の座りが悪いというか、
なじめないことが多々ある。
そば屋ってもともと、そんなものだろうか?
日本そばって、モダンジャズの流れる空間で
吟醸酒とともに楽しむものだっただろうか?

凛としたたたずまいがお好きな方を止める気は
さらさらないのだが、J.C.はあの手の雰囲気が苦手だ。
あまり酒を飲む気になれないし、
たとえ飲んでもうまいとは思えない。
それならば、気の置けない朴訥とした店で
ガラスの一合瓶に入った日本酒を飲んでいたほうが
心身ともにリラックスできるのである。

日本橋室町の「室町砂場」は
下町らしい小粋さと庶民的な空気を兼ね備えた
数少ない日本そばの名店である。
神田駅の向こう側、淡路町まで足を延ばせば
「まつや」や「かんだやぶそば」が控えていても
室町・本町・本石町界隈では
ほかに並ぶものとてない、そば処といえよう。

ビルに建て替わって久しいが
店内に漂う和みの空気は実に味のあるものだ。
46歳の若さで亡くなったそば通・杉浦日向子さんが
こよなく愛した店としてもよく知られている。
日本橋の呉服屋に生まれた彼女には
うってつけの憩いの空間であったことだろう。

オフィスから至近だったために「室町砂場」は
もっともひんぱんに通ったそば店である。
ほかに訪れたことのある「砂場」を思い浮かべると
まずは「室町」の支店に当たる「赤坂砂場」。
あとは「虎ノ門」、神谷町の「巴町」、「富沢町」、
三ノ輪の「総本家」、東銀座の「木挽町」、
吉原に近い「浅草」と、それこそ枚挙にいとまがない。
それでも「室町」は頻度において
ぶっちぎりの断トツなのだ。

数ある「砂場」の中でも
「室町」と「赤坂」は唯一、本店・支店の関係にある。
「赤坂」は「室町」とは逆に訪問の回数を数えると、
片手に余るほどしか行っていない。
ここ数日の間に2009年版「庶ミンシュラン」の
取材を兼ねてそれぞれを訪問してきた。
今回はこの2軒を食べ比べてみたい。

           =つづく=

 
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2008年9月25日(木)

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