第584回
「室町砂場」VS「赤坂砂場」(その2)
最近、姉妹店の「室町砂場」と「赤坂砂場」を訪れた。
数え切れぬほどに訪問した前者と
ほんの数回しか行っていない後者であるが
食べ比べてみて、紙上対決を試みたい。
どちらも2種類のそばを打つのは同じ。
ご存知、もりと別製ざるである。
両店のざるは他店にありがちな
もりの上に海苔を乗せたものではない。
そば粉自体が異なるものだ。
「砂場」のざるは他店の更科や御前そばとほぼ同じ。
日本酒でいえば、吟醸酒の米のように
そばの実を磨きこんだそば粉で打つのがざる。
印象としては香りのもりに、コシのざる。
そばつゆは両店ともそっくり。
モダンな内装でこだわりのそばを打つ店と
町場の大衆そば屋の中間といった感じだ。
J.C.は甘みを全廃したそばつゆを好まない。
かと言って甘ったるいのはもっとイヤだが
基本的に下世話な甘みを
ほんのりと残したタイプが好きなのである。
甘みを完全に抑制したつゆは
うどん・冷麦・素麺など、小麦粉系には適しても
そばには向いていないと思う。
もちろん、そのあたりは好き好きだけれど・・・。
そばの品書きもまったく一緒だ。
天ぷらそばや天ざるに使用されるのは
海老天ではなく、芝海老と小柱のかき揚げ。
この小柱が本当に細かく、殊に「赤坂」のものは
極端でパラパラとつゆの底に舞い落ちてしまう。
海老天入りの天ぷらそばを食べたい向きは
種込み天ぷらそばを注文すればよいが
値段がポーンと跳ね上がり、2500円もするから
これならうな重を食べたほうが賢いような気がする。
「室町」の隣りには「亀とみ」、
「赤坂」の至近には「赤坂宮川」と
優良なうなぎ屋がすぐそばにあるのも好都合。
酒肴もほとんど一緒だが
「赤坂」には酢の物が見当たらなかった。
両店の特長的なつまみは煮あさりと焼き鳥。
冷酒・燗酒、どちらにもよく合う。
結局、品書きの上では甲乙つけがたいというか、
違いを見出すことができなかった。
友人・知人の中には「赤坂」を強く推す人間が
散見されるものの、J.C.はその意見に与しない。
したがって両者の違いは店の雰囲気と接客に絞られる。
街のイメージとは逆に、日本橋の「室町」がモダン、
赤坂の「赤坂」はクラシックな店構えと内装を持つ。
どちらの居心地がよいかと問われれば、
椅子席も小上がりもスペースに余裕のある「室町」に軍配。
特に「赤坂」の小上がりは狭苦しく、
出入りの際に、隣りの卓にかなり気を使うこととなる。
接客は庶民的な「室町」、丁寧な「赤坂」ともに
けっこうだが「赤坂」に一分の利があるやもしれぬ。
好きなタイプの女性がいることも「赤坂」を取る一因で
「坊主憎けりゃ・・・」の諺に習えば、
「お運び好きなら、店まで好きだ」ということになる。
ちなみに「赤坂砂場」というのは
あくまでも通称、正式には「室町砂場 赤坂店」という。
【本日の店舗紹介】
「室町砂場」
東京都中央区日本橋室町4-1-13
03-3241-4038
「赤坂砂場」
東京都港区赤坂6-3-5
03-3583-7670
|