「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第588回
飛び切り新鮮なサカナたち(その1)

静岡県・沼津の街を初めて訪れた。
おいしいサカナを求めてのことだが
いつかは来てみたかった土地でもある。
寅さん映画のファンとして沼津は
やすやすとは忘れることができない場所だ。

第7作の「男はつらいよ 奮闘篇」で
沼津の駅裏のラーメン屋が出てくる。
店の親父が人間国宝の五代目・柳家小さん。
最近TVのコマーシャルに
一瞬だけ現れる丸顔のあの人だ。
孫の六代目が永谷園のインスタント味噌汁を
味わいながら「あっ、お爺ちゃん?」とやるあれです。

ラーメン屋でマドンナの榊原るみ扮する花子と
寅さんがラーメンをすすっている。
先に店を出た花子が沼津駅前の交番で
尋問されているところに、あとから出た寅さんが
たまたま通りかかって助け舟を出すのだが
巡査を演じたのがクレージーキャッツの犬塚弘。
このときに沼津の駅舎が映し出されるのである。
第7作はシリーズ中でもっとも好きな作品につき、
この街にもかねがね思い入れがあったのだ。

到着してみると、すでに駅舎は建て替えられたようで
昔の面影は少しも残っていない。
それもそうだろう、あれから30年近く経っている。
駅前の西武デパートの地下に潜ってみた。
目指すは鮮魚売り場である。
地場の太刀魚や岩手のソゲ(小型の平目)など、
活きのよいサカナが並んでいて
さすがに大漁港のお膝元、その水準が高い。


どんより曇った空の下、狩野川のほとりを散策。
今からちょうど50年前の狩野川台風では
伊豆半島の山間部を中心に1000人以上の人々が
濁流にのまれて犠牲になっている。
この日の川面はおだやかであった。
濃い魚影は落ち鮎だろうか、やまめだろうか。
釣りをしない身には判然としない。
釣り糸を垂れる人が見当たらないから
釣り人の興味をそそるサカナではないのかも。

川沿いに真っ直ぐ沼津港に向かうと
すぐに着いてしまうから、大きく迂回しながら歩く。
本郷町で「冨士家パン」という古いパン屋を見つけ、
衝動的にピロシキと小粒のあんドーナツを買う。
ピロシキはともかく、あんドーナツを買ったのは
狩野川台風の頃が最後ではなかったろうか。
TBSで放映中の同名ドラマのせいかもしれない。
秋祭りで賑わう浅間神社を通り抜け、
千本浜に出て、沼津港をぐるりと回る。

築地の場外市場を観光地化したような店々が
並ぶ一角は相当に興を醒ましてくれた。
どの店も似たり寄ったりで魅力に薄い。
ニセモノが横行していてホンモノが少ない。
こんなところで晩飯にしたら沼津に来た甲斐がない。
あきらめて中心街に戻ろうと決断したときに
市場のはずれで「海王」という名の活魚料理店に遭遇。
店先に貼り出した品書きが真っ当で
極端に観光客目当てではないことが読み取れる。
意を決して入店すると・・・。

             =つづく=

 
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2008年10月2日(木)

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