「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第596回
ドデカい蝦蛄に出会った

当コラムの読者のW辺氏が
北大塚に侮れぬ鮨店があるとおっしゃるので
一夜、案内を願った。
つい先週のことである。

大塚はたびたび訪れる町なのだが
ほとんどの場合、南大塚の旧三業地界隈。
駅の北西に位置する空蝉橋の交差点近辺は
食べもの屋の数が少ないわけでもないのに
なぜか出向く機会に恵まれなかった。

「すし処 面」に約束の18時に入店すると
W辺さんがすでにつけ台の隅で待っていてくれた。
客はわれわれ二人だけだが
隣りには予約席の札が置かれている。
さっそくネタケースを覗かせてもらう。
真っ先に目に飛び込んできたのが巨大な蝦蛄(しゃこ)。
殻付きのままで威容を誇っている。
愛媛の松山港に揚がったものだというから瀬戸内産。
瀬戸内では香川県の観音寺の蝦蛄が有名。

江戸前の小柴の蝦蛄には今年一度だけ遭遇した。
浅草の「鮨よしだ」の親方に譲ってもらったのだ。
サッポロ黒ラベルの生小で乾杯すると、
突き出しにサッとあぶったカマスがスッと出た。
つまみはいの一番にくだんの蝦蛄をお願い。
立派な姿にデジカメを置いてきたことを悔む。
それほどに美しい蝦蛄だったのである。
胴体は刺身、オケラの前足のような蝦蛄爪は
ボイルしていただいた。

ビールのあと、J.C.は芋焼酎の前田利右衛門、
W辺さんは清酒の吉の川に切り替える。
蝦蛄に続いてはまず小肌。
江戸前ではなさそうだったが
脂のノリもほどほどに満足のゆくもの。
もうちょっと酢が強かったら完璧だ。

壁の品書きに皮はぎを見つけ、
肝の有無を訊ねると、もちろんあった。
ある意味、ふぐ刺しより好きな
はぎ刺しにつき、一も二もなく注文。
これまた松山からの空輸モノで
産地の松山では皮はぎがことのほか珍重され、
割烹のみならず、居酒屋あたりでもありつける。
はたして感激の逸品であった。
身の張り具合がそんじょそこらのものとは別物だ。

焼酎をやはり芋の伝に替える。
何か焼き物をと頼んだまながつおの金山寺焼きが
またまた花丸ジルシ。
西京焼きはどこにでもあるが
金山寺味噌を使ったものはきわめて珍しい。

箸休めに真だこのやわらか煮をつまむと、
これが奥行きのある味付け。
かむほどにうま味が口中に拡がる。
一片だけ添えられた大根がまたたまらない。
真っ黒に煮しまって、あと数切れほしくなるほどだ。

にぎりは小肌を2カンに、あとは1カンずつで
新子・煮はまぐり・穴子の計5カン。
この店ではいきなりにぎりに突入せず、
じっくりと酒肴の数々を堪能したい。
W辺さん、よい店を紹介してくれてありがとう。


【本日の店舗紹介】
「すし処 面」
 東京都豊島区北大塚2-8-12
 03-3918-1687

 
←前回記事へ

2008年10月14日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ