「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第609回
奇妙な体験(その2)

東京丸の内の東京銀行協会ビル内の
クラブ関東における「映画鑑賞の夕べ」に
K石クンとともにやって来ている。
50名の定員のところ、集まったのは7名。
われわれが一番の若手だから平均年齢は相当に高い。

映画の始まる18時前までは別室で別料金にて
カレーライスやサンドイッチの用意があった模様だ。
味と料金を確かめたかったが、そんな時間はなかった。
でも、この少人数では商売も上がったりだろう。
鑑賞室は西洋館のリビングに招かれて
映画を観るような雰囲気だった。
われわれだけが浮き上がって
どこか別世界に迷い込んだ心持ち。
現在進行形で世にも奇妙な体験をしている実感があった。

とにもかくにも川島雄三の名作「幕末太陽傳」が始まった。
ニュープリントなのかフィルムの傷みがほとんどない。
過去において4回ほどは観ている映画だが
今回の映像がもっともキレイだった。
オープニングの幕末の品川宿から
現代、と言っても1957年の北品川界隈に
画面が切り替わるところが川島の面目躍如だ。
翌年には売春防止法が施行される1年前のことで
奇しくも大江健三郎が「奇妙な仕事」を
書き下ろした年でもある。

この映画は怪優・フランキー堺の独壇場。
女優陣では左幸子を始め、
最近話題を集めている南田洋子もそれなりの演技だ。
カリスマ性に欠けても南田の美しさは特筆に価する。
ところが男優たちのヒドさは目を覆わんばかり。
往年の日活の若き日の大スターたちが
銀幕の上で揃いも揃ってコケまくっている。
科白回しがハッキリしていて聞きやすいから
石原裕次郎には目をつぶろう。
しかし小林旭と二谷英明はあまりにお粗末で
本人たちも二度と目にしたくない映画のハズである。

1時間50分の映画が終わった。
黒服さんたちに丁重に見送られ、
夜の街に出たのが20時過ぎ。
この夜は半蔵門線で一本の錦糸町に席を確保してある。
北口のトリフォニーホールのはす向かいの
「和可奈鮨」に直行した。
K石クンの片割れで、残業中のDニクも呼び出して
またまた3人で酒を酌み交わすこととなった。
最近はこの顔ぶれで飲むことがなぜか多い。

ビールのあとは芋焼酎・さつまおご女をボトルでお願い。
突き出しに銀むつの煮付けと若布のぬたが出た。
つまみは平目の薄造りをポン酢とわさび醤油で味わう。
けっこうな量があり、エンガワもしっかりと付いていた。
そのあとはさっそくのにぎりだ。
小肌縞あじ煮いか・赤身・〆さば・煮はまぐり
順調に継いでいった。
例によって赤字は特筆モノである。
やや大ぶりのにぎりはガツンとインパクトがある。

ひよっ子・芽ねぎ・穴子・〆さば・新いか・玉子ときて
かんぴょう巻きで締めくくった。
〆さばをアンコールしたのはこの店では白板昆布を
かぶせたほうが美味なので、それをリクエストした次第。
聞きなれないひよっ子というのは
二つ割りにしたゆで玉子の白身をその形のまま使い、
黄身の部分に酢めしを詰める江戸古来の鮨である。
都内ではこの「和可奈鮨」以外では見たことがない。


【本日の店舗紹介】
「和可奈鮨」
 東京都墨田区錦糸2-3-2
 03-3622-0207




 
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2008年10月31日(金)

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