「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第611回
伝説の立ち飲み居酒屋

銀座の街を東西につらぬく晴海通りを
東に向かって進み、築地を通り抜けると
隅田川の最下流に架かっているのが勝鬨橋。
その橋を渡ってほどなく、勝どきの交差点にぶつかる。
この交差点の南西のコーナーはただ今、大再開発中。

かってこの一角には2軒の名店があった。
今にも倒れそうだった焼き鳥の「鳥善」と
比較的新しい建物の1階にあった
立ち飲み居酒屋の「かねます」である。
どちらもこの春に解体された。

それでは完全に消滅したのかというと、
さにあらず、すぐ近所に移転していた。
交差点を右折し、豊海方面に向かうと、
すぐ右側に「かねます」があり、
その隣りのプレハブの2階に「鳥善」がある。

今回は立ち飲みの「かねます」を訪れた。
この店は立ち飲みといっても
ふぐや鮑や蟹を食材に使用しており、
2千円前後の支払いの立ち飲み屋とは
同じ土俵の上では語れぬものがあって
それなりの出費は覚悟して出掛けたい。

壁に掛かった品書きボードを見てみよう。

 生海胆牛肉巻き・甘鯛あんかけ蒸し・甘鯛唐揚げ・
 あわび刺し・まぐろ刺し・からすみ・生湯葉・
 松茸土瓶蒸し ―― 1800円
 
 ぐじ昆布〆・〆さば・ふぐ酢・あんきも・
 穴子焼き ―― 1500円

 茄子田楽・たこぶつ ―― 1200円

ご覧のように、最安のつまみでも
一品が1200円と結構な値段である。
生海胆の牛肉巻きはこの店のスペシャリテで
人気商品なれど、J.C.としては別個にいただきたい。
昆布〆に使われている、ぐじというサカナは
言わずと知れた甘鯛のことだ。

この夜は「かねます」の先の新島橋のたもとにある
居酒屋「輿」で下地を作ってきたから
酒も料理もそんなにはいただけない。
すでにビールも芋焼酎も飲んでいるので
定番のハイボールをお願いした。
これを飲むと下町の酒場に身を置いている実感が
ひしひしと感じられるのである。

料理は松茸の土瓶蒸しと
甘鯛のあんかけ蒸しの2品を注文。
別にムシムシする夜ではなかったが
「蒸し蒸しシリーズ」で攻めてみた。
甘鯛はともかく、松茸のほうは
ハイボールとの相性がイマイチで
ここはどうしても日本酒がほしくなるが
ジッと我慢の子であった。

土瓶蒸し自体は満足のいく仕上がりで
殊に容器の土瓶がしゃれている。
この料理を思いついた料理人には
心から敬意を表したい。
アイデアの勝利が卓上に燦然と輝いている。


【本日の店舗紹介】
「かねます」
 東京都中央区勝どき1-10
 03-3531-8611

 
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2008年11月4日(火)

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