「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第614回
予約の取れない焼き鳥屋(その1)

飲み友だちに当コラムにもときどき登場する
グルメカップルのN戸夫妻がいる。
麻布十番の隠れた人気焼き鳥店「世良田」を
紹介したら、すっかりおハマりになってしまい、
取りにくい予約も何とか取ってもらえる
常連の仲間入りを果たした様子だ。

先夜、彼らにとってはしょっちゅう、
J.C.にとっては久しぶりの訪問と相成った。
カウンターの焼き台に向かって
左隅の定席に陣を取らせていただいた。

まずはハートランドの中ジョッキで乾杯するのだが
この生ビールの注ぎ方からして
彼らとJ.C.の好みは両極端。
彼らはどこへ行っても必ず注ぎ手に
「荒々しく!」と指示して、泡の分量もやや多め。
こちらはその真逆で、静かに静かに注いでもらい、
ほとんど泡ナシが理想とするところなのだ。

泡に多い少ないの差はあるが、
共通点は互いにクリーミーな泡が大嫌いなこと。
半可通に言わせると、クリーミーな泡が蓋となって
大切なビールの風味を閉じ込めるんだと・・・。
われわれ3人はビールの風味が飛ぶほどの
時間の余裕をビールに与えない。
ビールを甘やかしたりしないのだ。
あっと言う間に飲み干しちゃうんだもんね。
指をくわえて泡なんか眺めていないんだもんね。

半可通の言うように
飲みものには蓋が必要不可欠なら
ワインなんかどうなっちゃうんだろう。
ウイスキーやコニャックはどうするんだろう。
高価なシャンパーニュでさえ、泡はすぐに消えちゃうよ。
とにかくビールは注がれたらすぐに飲む、これが鉄則だ。

春菊の胡桃和えの突き出しと
本わさびをたっぷり添えた鳥わさで
中ジョッキを2杯やっつけたら、お次の赤ワインは
アンリ・ムルジィのジヴリー・シャンベルタン‘04年。
ブルゴーニュの銘酒はなかなかにキレ味鋭く、
3人が3人とも納得の1本だった。

焼き鳥の前に、新香の盛合わせもお願いした。
内容は、きゅうり・かぶ・にんじん・大根・
みょうがのぬか漬けに、大葉風味のたくあん。
さすがにぬか漬けは赤ワインより
ビールとの相性が上だが、
たくあんとワインは悪い取り合わせではない。

「世良田」での焼き鳥は
注文した順番をキッチリ守って焼かれる。
5〜6種類まとめて注文しても
客が通した順番をけっして変えたりはしないのだ。

この夜は長ねぎとしし唐を間にはさんだ
ジューシーなもも肉でキックオフ。
徳島の阿波尾鶏を使用していて
これが何とも言えずに美味。
素材の良さもさることながら、
焼き手である店主の神経が行き届いているのだ。
さすがに常連客だった女性のハツに串打ちして
自分の女房にしてしまっただけのことはある。

            =つづく=

 
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2008年11月7日(金)

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