「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第615回
予約の取れない焼き鳥屋(その2)

麻布十番で予約の取れない焼き鳥屋として
名声を誇っている「世良田」に
友人のN戸夫妻と一緒に3人で来ている。

常連客を手ゴメにしてしま・・・もとい、
口説き落として女房にしてしまった
店主の焼く焼き鳥は徳島の阿波尾鶏。
ちなみに焼き鳥好きの店主夫妻の気に入りは
中央区・京橋に本店を構え、
銀座や新橋にも進出している「伊勢廣」である。
あちらは島根の大山鶏使用と聞いた。

悪名高き友里征耶が著書の中で
「世良田」を賞賛しておいて
「伊勢廣」をコキおろしたものだから
店主夫妻は気まずくなってしまい、
行きつけの店に行かれなくなったと嘆く。
まったくもってロクなことをしない男だよ、アレは。

仕方なく休みの日には夫婦揃って
あちこちの焼き鳥店を求め、
東京の街をさまようそうだが
「自分の店の焼き鳥を食べればいいのに」と
矛先を向けても、そうは問屋が卸さぬものらしい。
天ぷら職人が天ぷらを揚げ続けたあと、
その天ぷらを受け付けなくなるのと同じだと言う。

鳥わさと新香盛合わせでハートランドの生を2杯やり、
ブルゴーニュの赤に切り替えて
もも肉のタレ焼きでスタートしたところだった。
他店の追随を許さぬ焼き上がりに舌鼓を打ち、
次なる一串はレバーである。
見事な血肝の先にはハツが一切れついて
串の中央あたりには
角切りのフォワグラまで照り輝いている。
これもタレでいただいた。

続いてナンコツ入り鳥団子とハツを塩でやる。
N戸夫妻の好みは団子の外側をあぶっただけの
レアな仕上がりなのだが、これが実にうまい。
日本ではあまり見かけないレアのハンバーガーは
ニューヨークあたりでは意外とポピュラー。
彼らは気持ち悪がらずに平気でかぶりついている。
良質の挽き肉の半ナマはとてもおいしいものだ。

身肉を少々残した皮身と大串の合鴨ねぎまも塩。
「世良田」の鳥モノは抜群ながら、
なぜか合鴨には傑出しところが見られない。
銀杏で一息入れてから、バジル風味のプチトマト、
せせりと呼ばれる首肉と食べ継いでいった。
箸休めは鳥もつの生姜煮とこしょ醤油漬け。
こしょというのは小さな青唐辛子のこと。
これがピリリと利いて恰好のアクセント。

だいぶお腹がくちくなってきたが
最後の締めはこの店で初めて試す鳴門金時。
知る人ぞ知るさつま芋の人気ブランドだ。
徳島平野から鳴門海峡にかけての砂地で作られる
やや小ぶりのオサツは繊細なテイストが持ち味。
じっくりと焼き上げた1本を3人で分け合った。
じゃが芋同様にバターとの相性がよい。
ヴァニラのアイスクリームとも合わせてみたが
これまた秀逸、デザートの役目をキッチリと
果たしてくれたのだった。

 
←前回記事へ

2008年11月10日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ