「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第617回
東京屈指の日替わり定食

東京のど真ん中、
いや、地理的には日本のヘソともいえる
お江戸日本橋のすぐ隣りにありながら
下町情緒を色濃く残す人形町。
大きなオフィスビルがほとんどないせいか、
この町を歩いているとホッとする。

今は浅草の奥座敷・千束に移った吉原は
江戸時代初期にはこの地にあった。
旧町名の葭町(よしちょう)が示すように
その当時は吉原ではなく、葭原だったのである。
1657年に発生した明暦の大火(振袖火事)により、
葭原もろとも江戸の町が焼けつくされたあと、
新吉原として現在の地に復活した。

人形町には鮨・そば・天ぷらと、
古くからの和食を扱う店が多いが
洋食屋の老舗が目立つのも特徴だ。
いずれも明治時代創業の「小春軒」・
「来福亭」・「芳味亭」・「桃乳舎」に加えて
ロールキャベツの「どんぐり」と
ビフカツの「キラク」もユニークな存在で
忘れることができない。

天ぷらの佳店も少なくなく、
箱崎のTCATに近い「つじ村」と
久松警察の筋向いにある「みやび」、
そして「小春軒」から2本隅田川寄りにある
この「中山」が御三家だろうか。

中でも「中山」はJ.C.の気に入り店の筆頭格。
昼めしどきにも晩酌時にも重宝している。
ことに日替わり定食は東京屈指と言えよう。
天ぷら定食や天丼もさることながら
昼にここに来ると、どうしても日替わりを注文してしまう。
「J.C.オカザワの昼めしを食べる」でも紹介したが
半年ほどご無沙汰したので、食べたくなっておジャマした。
土日祝が休みにつき、出掛けるのは平日に限られる。

11時45分に暖簾をくぐると、
先客は近隣のOLさんだろう、
女性が一人で天丼を召し上がられていた。
カウンターに落ち着き、品書きを見て驚いた。
半年前には900円だった日替わり定食が
1050円に値上がりしている。
今年は諸物価値上がりの年だったから
これも致し方なく、この値段になっても
東京屈指の昼めしであることに変わりはない。

「中山」の日替わりは
天ぷらと刺身のコンビネーションが魅力だ。
その日の内容は天ぷらが海老2本・穴子・玉ねぎ。
刺身はまぐろの赤身が4切れだった。
これにしじみの味噌椀と大根の新香とどんぶりのごはん。
この大根がたくあんとベッタラ漬けとぬか漬けを
全部足して3で割ったような味わいで特筆。
これが4枚も付くのである。

どういうわけかこの日は天ぷらのコロモが少々粉っぽい。
もうちょっとカラリと揚げてほしかった。
ところがそれを補って余りあったのがまぐろの赤身。
4切れのうち、2切れは肉割れが身肉に走った極上品。
脇には穂じそとむら芽を従えて
たっぷりの本わさびが何よりもありがたい。
天ぷら屋ではめったに出会えぬ珠玉の刺身がここにある。

【本日の店舗紹介】
「中山」
 東京都中央区日本橋人形町1-10-8
 03-3661-4538

 
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2008年11月12日(水)

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