第621回
どぜうは丸か? 骨抜きか?(その2)
東京は浅草のどぜう屋さん「飯田屋」に来ている。
浅草寺を中心としたコアの浅草とは
国際通りを隔てたこの一角を西浅草と称する。
通りの名前の由来ともなった
松竹SKDの牙城・国際劇場は
1982年に閉館して今は跡地に
浅草ビューホテルがその高殿を誇っている。
東京の国際劇場が消えて四半世紀を超えたが
大阪には難波の千日前国際劇場と
通天閣そばの新世界国際劇場の
2つの国際劇場が生き残っている。
新世界といえば、六区の場外馬券売場のある場所には
かって東急グループの複合娯楽施設・新世界があった。
しかし、これも10年と持たずに閉鎖の憂き目を見る。
「飯田屋」の前の通りは合羽橋通りという。
毎年7月に催される七夕祭りで有名だ。
合羽橋というと道の両側に調理器具や
食器を商う店々が並ぶ景色が目に浮かぶが
そちらは合羽橋道具街が正式名なのである。
「飯田屋」でマル鍋を楽しんだら、お次はヌキ鍋。
この時期はどぜうが腹子をはらんでおり、
割かれたどぜうとともに煮て食べる。
言わば、どぜう版の親子煮ですな。
 |
親と子の艶姿 photo
by J.C.Okazawa
|
これは初夏から夏場にかけてのお楽しみ。
見た目も舌ざわりもマルよりヌキのほうが
はるかにとっつきやすいから
初心者にはヌキがおすすめとなろうか。
ヌキですら尻込みする向きを
どぜう屋に連れて来てはいけないが
最後の手段は柳川だろう。
この日のヌキには笹がきごぼうもお願いした。
長ねぎはいくらお替わりしても無料だが
ごぼうと豆腐はそれぞれ320円。
価格が出たところで肝心のどぜうにもふれると、
マルが一人前1400円で、ヌキと柳川は1500円だ。
 |
どぜうに半分火が通る photo
by J.C.Okazawa
|
マル鍋にはおすすめしないが
ヌキ鍋の場合はどぜうを溶き玉子にくぐらせてもよい。
ついでに言えば、玉子でとじる柳川でさえも
生玉子にくぐらせると、よりおいしくなる。
鍋が煮詰まって味が濃い目になったときは効果的だ。
建て替える前はもっと情緒があった「飯田屋」だが
そこは腐っても鯛、籐畳に下町の風情を残している。
 |
仲間と一緒が一番 photo
by J.C.Okazawa
|
どぜう屋では好きな女と二人っきりでシッポリと、
というのも粋だが、仲間と集ってワイワイが何よりだ。
冬季には珍しいなまず鍋と
おなじみのかき鍋が食べられる。
二度、三度と通われる方にはこちらも推奨したい。
|