「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第622回
これが本当の鮨屋の姿(その1)

「食べものの中で何が好き?」と問われれば、
5つも6つも好物の名がすらすらと出てくるが
「好きな飲食店は?」と問われたら、ちょいと悩む。
日本人だから和食系は大好きだが
懐石のようなコース料理やナントカ尽くしの類いは
どちらかといえば遠慮したいほうだ。

鮨・天ぷら・うなぎ・そばはみんな好き。
とんかつ・焼き鳥・すき焼きに加えて
にっぽんの洋食も好んで食べる。
だが、総合和食で攻めてくる
立派な日本料理店はあまり得意ではない。

J.C.の食は細いとはいえないけれど
けっして太いほうではない。
食物を摂取するとすぐに血糖値が上がり、
脳から胃や食道や舌に
「ストップ!」の指令が下されてしまう。
だから好きなものを少しずつ食べるのが一番だ。
ボリュームよりもヴァリエーションを楽しみたい。

好きな料理をズラリと並べてみて
どれか一つとなると、やはり鮨に落ち着く。
高級である必要はないが
鮨種は新鮮にして良質であってほしい。
酢めしは固めで酢の利いたものがよい。
わさびだけは絶対に本わさびでなくてはならない。

いつぞや読者の方にお聞きしたのだが
高名な文芸評論家の方がどこかで書いた記事に
“J.C.オカザワの本わさび志向には
多くの日本料理店が迷惑している”
というのがあったそうだ。
実際に読んでいないので長々と反駁はしないが
一言だけ言わせてもらえば、
「そんな日本料理屋は暖簾を下ろせばよろしい」
なのである。

もちろん大衆的な料理店ではコスト的に
無理があろうから本物の使用を強制などしない。
でも「迷惑する」などいう発言は
あまりにもプロの料理人としての矜持に欠ける。
聞いていて情けない。
500円のもりそばに本わさびを添えるそば屋もあるのだ。
こういうお店は心から愛おしくなってしまう。
中には本わさびは別料金で
100円なんてところもあるがこういう正直な店も好きだ。

さてさて鮨であった。
東京の街には若手の鮨職人による高級店が
あちらこちらで開業している。
閉店したという噂を耳にしないから
それなりに繁盛しているものとみえるが
金融危機のせいで得意先の財布の紐もそれなりに
堅くなることが予想され、今後の動向が心配だ。

その点、日本橋・高島屋裏の「吉野鮨本店」は
庶民でも気軽に入れるのが何とも好ましい。
金融危機とは無縁だが、さすがに夜に訪れて
飲んで、つまんで、にぎってもらうとなると
そこそこの支払い額になるものの、
それでも銀座の高級店の3分の1程度である。

            =つづく=

 
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2008年11月19日(水)

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