「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第640回
明治12年創業のちらし鮨(その1)

昼めしどきに鮨屋に入ることはまれである。
入ってもほとんどの場合、
にぎりではなく、ちらし系に走る。
にぎりだと、必ずビールを飲みたくなるからだ。
昼のアルコールはなるべく避けたい。
したがってばらちらしや吹き寄せちらしを食べる。
吹き寄せというのは一般にいう生ちらしのこと。
ただし店によっては、ばらちらしを
吹き寄せというところもあるので、少々、ややこしい。

東神田に古風な店構えの鮨店が一軒あって
その屋号を「帆掛鮨」という。
玄関だけでなく、勝手口にもきちんと
「帆掛鮨」と染め抜いた暖簾が掲げられている。
見るからに律儀そうな店舗なのである。

JR総武線快速・馬喰町、JR総武線・浅草橋、
都営地下鉄新宿線・岩本町の以上3駅を結ぶ
三角形のちょうど真ん中に位置しており、
JR秋葉原、日比谷線・小伝馬町、
新宿線・馬喰横山からもそう遠くはない。

「ほかけ」と聞けば、
五月蝿(うるさ)い鮨っ食いも一目おく、
江戸前鮨の老舗が思い浮かぶ。
この名店は百年以上も前から
銀座通りに暖簾を掲げていたらしい。
銀座松屋の向かい辺りのはずだ。
それがつい先頃まで銀座三越の真裏にあった。
現在は三越の増床工事に伴い、
東銀座のインド料理店「ナイル」の並びに移転した。

さて、その東神田の「帆掛鮨」。
古き良き東京を食べる」や「昼めしを食べる」の
取材の際によほど入店しようと考えたのだが
店先のランチボードの
「にぎり1.5人前1300円」というのが
どうしても引っかかってしまった。
J.C.は原則、1.5人前をやる鮨店には
足を運ばぬことにしているからだ。

それでもつい最近、たまたま「帆掛鮨」の
近所の銀行に出向く用事があった。
銀座「ほかけ」とのつながりにも
興味があったので、意を決して入店してみた。
前日の夕食が軽めだったのと、
当日は朝から何も食べていなかったのが重なって
<ちらし850円 大盛り950円>のメニューを
見比べているうち、無謀にも大盛りを注文。
値段の開きから想像するに
大盛りは酢めしだけの増量であることが判る。
5分と待たずに現れた大盛りちらしの全容は

 あじ・かんぱち・まぐろ赤身2枚・たこ・ゆでいか・
 スモークサーモン・海老・帆立・玉子2切れ・
 かまぼこ・酢ばす・きゅうり・漬け生姜・もみ海苔
 しじみ赤だし

大盛りだけに、酢めしは鮨桶にあふれんばかり。
一見して後悔の念に襲われたが、もう遅い。

             =つづく=

 
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2008年12月15日(月)

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