第643回
夢の競演 白トリュフVS黒トリュフ(その1)
今年も何とか白トリュフにありつけた。
イタリア語でタルトゥーフォ・ビアンコ。
僥倖というほどではないが、とても幸せである。
それも北イタリアのアルバ産だ。
正真正銘の本場モンである。
この世にこれより上等のトリュフは存在しない。
このキノコを初めて味わったのは
―少量にすぎてとても食べたとは言えない―
二十数年前のニューヨークだった。
手打ちのパスタ、タリオリーニに削りかけてもらった。
香りに魅了され、翌年のシーズンが到来するやいなや、
別のリストランテだったが飛んで行って
今度は目玉焼きの上に削ってもらった。
目玉の焼き加減はもちろんサニーサイド・アップ。
11月末に新日本橋のヴェネツィア料理店、
「ダンドロ ダンドロ」において
白&黒トリュフに加えてポルチーニまで
食べつくそうという食事会が開かれた。
黒トリュフはウンブリア産で
ポルチーニは白トリュフに同じく、
ピエモンテ州の産だ。
集まった食いしん坊は総勢9名。
生ビールでのどを潤していると、
本日の主役が顔見せに登場。
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黒に取り囲まれた白の勇姿
photo by J.C.Okazawa
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ただ眺めるだけではなく、
よってたかって豚のように嗅ぎまくった。
あんまり嗅ぎすぎて香りがみな吸い取られるほどに。
この日のワインは
モンテプチアーノ・ダブルッツォの白に始まり、
それ以外は白のガヴィ、赤のガッティナーラに
バルバレスコなど、すべて白トリュフと同郷だった。
フルコースの最初の一皿は
パルマ産生ハムのクロスティーニ。
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生ハムと白トリュフバターのクロスティーニ
photo by J.C.Okazawa
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赤身と脂身のバランスのよい生ハムの下のパンには
白トリュフのバターがしっかりと塗り込められている。
これがたまらなくうれしい。
お次は岩手産短角牛のカルパッチョ。
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黒トリュフをあしらったカルパッチョ
photo by J.C.Okazawa
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短角牛は日本古来の南部牛とアメリカから輸入された
ショートホーン(短角)の交配種。
昭和32年に日本固有の食肉専用種として認定された。
短角牛の体毛の色は赤茶色。
このおかげで赤べこの愛称で親しまれている。
寒さに強く主に東北と北海道で飼育される。
黒毛和牛と比べ、脂肪が少なくアミノ酸が多い。
霜降りのように脂のうまさで食べさせないところがよい。
子育ての上手な牛という評判だが
そんな心優しい牛クンを食べてしまうのだから
まったくもって、人間ってヤツは・・・なのである。
=つづく=
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