「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第647
ポルトガルを食べよう(その1)

およそ10年前からのスペインバル・ブームは
すでに過去のものとなったのだろうか。
お客の入らない店は閉店の憂き目を見ているが
そこそこ健闘しているところも少なくない。
人件費と内装費があまり掛からず、
厨房設備もそれほど大それたものは
必要ないから場所を取られることもなく、
家賃を低く抑えられる。
ラーメン店のような造作でも営業が可能で
いざというときに小回りが効く。
一度、失敗しても立ち直りやすい業種と
いえないこともない。

スペインの陰に隠れているというより、
絶対数があまりに少ないので
目立たないポルトガル料理店は
都内にもっと増えていいのではないか。
渋谷の東急本店から松涛に向かったところに
「マヌエル・ コジーニャ・ポルトゲーサ」が
オープンしたのは10年ほど前だったろうか。
それが今では高輪や丸の内などに
支店展開するほどに大きく成長した。

気の置けない渋谷店は好きだけれど、
一番の気に入りは四谷に近い六番町の
「マヌエル・カーザ・デ・ファド」。
「ファドの家」の店名通りに
ファドのライヴを楽しむこともできる。

その夜は演奏がなかったが食事に出掛けた。
スーパードライの小瓶のあとは
作家・檀一雄が同名のよしみで
愛飲したという赤ワインのダン。
銘柄はキンタス・ドス・ロケス‘05年
ボルドータイプの風味を持つ
このワインの値付けは4800円。

当夜のメンバーは3人で1本では足りない。
2本目は逆にブルゴーニュ風のペリキタ‘04年。
これが5400円だった。
ここ数年、この店のワインの値付けが
上がったような気がする。
というか、安価なワインがリストに見当たらない。
「4800円はじゅうぶんに安価じゃないか!」ってか?
はたしてそうかなァ・・・。

ビールの友としたのはバカリャウのコロッケ。

ほぐした干し鱈のコロッケ
photo by J.C.Okazawa

バカリャウというのは干し鱈のことだ。
スペインやポルトガルの人々は
自分たちの目の前の海では獲れない
このサカナの干物をやたらに食う。
コロッケはちょっと凡庸な印象で
舌を喜ばせるインパクトに欠けた。
パンにはバターのほかに
レバーパテを添えてくれて、これはありがたい。

お次の小皿は、鶏砂肝のトマト煮。
まさしく砂肝そのまんまという料理は
何の変哲もないものだったが味はよい。
スジ取りも丁寧で口当たりもよかった。
コロッケのもの足りなさを砂肝がカバーした形だ。

            =つづく=

 
←前回記事へ

2008年12月24日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ