「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第668回
下町マンマのイタリアン

ひとくちに下町と言っても、いささかひろおござんす。
人によってはずいぶんと区分けが異なって
谷中や麻布十番、はては葛飾柴又まで
下町と言い出す方もいるくらい。
いくらなんでも、それはゆき過ぎというものだ。

J.C.の下町のイメージは
自著「下町を食べる」にも記した通り、
下記のごとくである。

隅田川からそれほどの距離をおかない両サイド。
右岸では中央区と台東区、
左岸は江東区と墨田区の計4区にまたがる。
中央区は、銀座・豊海町・晴海を除く全エリア。
台東区は、上野・下谷・台東・秋葉原を除く全エリア。
江東区のおよそ4分の1、
墨田区のおよそ3分の1を占めている。

中でも生粋の下町と感じるのは深川。
続いて人形町辺りだろうか。
明治の終わりに著された永井荷風「すみだ川」では
浅草から葭町(現・人形町)へ向かう主人公に
下町へ出掛けると言わせていることから
当時は浅草が下町ではなかったことがうかがい知れる。

さて、深川はお不動さんの裏手に
知る人ぞ知るイタリアンの人気店がある。
オバさまシェフがたった独りで腕を振るう
下町マンマの名店はそう簡単には予約が取れない店だ。

秋も深まりを見せる一夜、満を持しておもむいた。
月明かりが下町の裏路地を照らしている。
まずはイタリアビールのモレッティでのどを潤し、
定番のアンティパスティ・ミスティ(前菜盛合わせ)。
皿の上には、しめじと舞茸のシチリア風、
小海老とブロッコリーのペペロンチーノ、
白花豆とツナのマリネが盛り込まれていた。
いずれも本場の味に力負けしない
ガツンと来る仕上がりであった。
奥から出してくれた、とっておきの赤、
カステッロ・モナーチ 
プリミティーヴォ・サレント‘05年を抜いてもらう。

ここで秋刀魚スモークのサラダ仕立てと
各種パーネの盛合わせが登場。

秋刀魚は強めの温燻
photo by J.C.Okazawa


ハムを練りこんだパーネがうれしい
photo by J.C.Okazawa

役者が揃い出すと、赤ワインがキリリと引き立つ。

主菜はヒゲ鱈のミラノ風。

チーズが降り積もるヒゲ鱈
photo by J.C.Okazawa

肉厚の白身魚は、オーソドックスな真鱈とは
また一味違った深い味わい。
最後のパスタはソースにバジリコと松の実を
ふんだんに使ったペンネ・ジェノヴェーゼ。
これまた濃厚な旨味に満ちている。

このあとはこのまま歩いて
清澄か森下の居酒屋で軽く一杯と目論んだのだが、
下町マンマに袖を引かれ、店の裏手に回ると、
なんとそこではマンマの旦那さんが
小粋なジャズバーを営んでおられた。
とっつきやすい人柄にも誘われ、
普段は口にしないシングルモルトの
ラフロイグ、タリスカー、はては
グレンフィディックまでいただきました。
良心的なお勘定にも心温まった一晩は
マンマの料理にパパの酒。
お二人さん、どうもご馳走さまでした。


【本日の店舗紹介】その1
「たまキャアノ」
 東京都江東区深川2-18-12
 03-3641-1542

【本日の店舗紹介】その2
「おとふけ」
 住所は「たまキャアノ」と同じ
 電話番号は非公開ながら
 グループでの予約等はマンマにお願い

 
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2009年1月23日(金)

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