「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第671回
しばし別れのパレスホテル(その1)

♪ しばし別れの 夜汽車の窓よ
  云わず語らずに 心とこころ
  またの逢う日を 目と目で誓い
  涙見せずに さようなら ♪
  (作詞:佐伯孝夫 作曲:佐々木俊一 唄:小畑実)

だしぬけに時代がかった歌謡曲の歌詞なんざ
並べさしていただいて、失礼さんにござんす。

今日は昭和26年のヒット曲で
幕を明けさせてもらった。
この曲は同名の映画にもなった。
主役は往年の二枚目にして
後半生はやくざ映画の悪役専門、
鶴田浩二や高倉健のドスをさんざっぱら
その腹に突き立てられた水島道太郎。
ヒロインは黒澤監督のお気に入りで
人妻となり、子の母となっても
永遠の処女のイメージを失わない香川京子。

また何で「しばし別れの〜」を持ち出したかというと
皇居前は内堀通りに、コンパクトな姿を遠慮がちに見せる
パレスホテルが建て替えのため、
この1月31日(宿泊は翌日のチェックアウト)をもって
しばし休館となるからである。

皇居の中をのぞいちゃ失礼とばかりに
貞操を、もとい、低層を守り続けた永遠の処女が
いよいよ2012年には、そのヴェールを脱ぐことになる。
おそらくずいぶんと身の丈を伸ばして
生まれ変わることになるのだろう。

それはそれで楽しみなのだが
J.C.にとってパレスは実に思い出深きホテルなので
心の中に一抹の寂しさが去来するのも
また致し方のないことではある。

このホテルを初めて見上げたのは1968年の夏だった。
当時、まだ高校生だったJ.C.は
パレスホテルから歩いて5分ほどの東京駅にあった
東京ステーションホテル(こちらもリニューアル中)の
コーヒーショップで夏休みの日々、
ウエイターのアルバイトに勤しんでいた。
コーヒーショップといっても
喫茶店のたぐいではなく、
町のミルクホールが洋食や麺類を提供するが如く、
様々な料理が自慢のレストランだったのである。

記憶の糸をたぐってみると、
カツカレーライス、スパゲッティウインナー、
ポークチャップ、ハンバーグステーキ、
親子丼、中華そば、江戸前にぎり鮨と
何でもござれであった。
酒のつまみも用意されていて
節操がないといえば、そうかもしれないが
デパートの食堂を思い浮かべていただければよい。

確か、中華そばが150円、スパゲッティが170円。
薄めのポークチャップと小さ目のハンバーグと
生野菜とライスをステンレスの皿に盛りつけた
Bランチが280円だったと記憶している。

           =つづく=

 
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2009年1月28日(水)

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