第688回
レトロな食堂に栄華を偲ぶ(その2)
2年ぶりの秩父「パリー食堂」に
同期生が総勢7人で押しかけている。
創業80年を誇る登録有形文化財は
お隣りの「安田屋精肉店」と並んで
秩父の町きっての有名店である。
この一郭にはかつて銘仙とセメントで
繁栄を極めた秩父の栄華が
その名残りをとどめている。
11時半過ぎに入店すると、
店主と思しき小父さんのほかには誰もいない。
結局、最初から最後まで客はわれわれだけだった。
1月中旬の秩父の外気はそれなりに冷たい。
ところが店内はもっと寒かった。
部屋の片隅に石油ストーブが据えられていても
これがちっとも役割をはたしていない。
ご覧のように猫1匹を温めるだけの
パワーしかないのである。
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独り暖をとる猫
photo by J.C.Okazawa
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みなコートを着たままの昼食を余儀なくされた。
店内は2年前といくぶんも変わっていない。
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カフェーの面影が残る
photo by J.C.Okazawa
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いろんなものが雑然と置かれたり、
飾られたりして、その総合力で雰囲気を醸している。
達磨の目はいつ入るのだろう。
両目が埋まってもビニールにをかぶったままだろうか。
7人がてんでに別々のものを注文しては
いつになったらでき上がるのか想像もつかないので
ある程度まとめてお願いした。
カツカレー(750円)・野菜そば(650円)・
揚げ焼きそば・かつ丼(各700円)の4種類である。
J.C.は以前にも食べたかつ丼をあえて所望した。
ユニークなどんぶりをカメラに収めたかったからだ。
待つあいだの無聊を慰めるために
ビールを頼むとシナチクがサービスされた。
凍えながらのビールもまたオツなものである。
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シナチクは全員に配られた
photo by J.C.Okazawa
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待つことおよそ15分。
驚いたことに4種類7人前の料理が
いっぺんにでき上がったのだ。
ここの小父さんの手際のよさに感服する。
みなそれぞれに熱いどんぶりを抱えて
かじかんだ指先を温めながらいただいた。
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野菜そばは他店のタンメン
photo by J.C.Okazawa
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ボリューム満点カツカレー
photo by J.C.Okazawa
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かつ丼の青いどんぶりには
「ぱりー」の文字が浮かび上がっている。
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とても鯔背なブルー・ボウル
photo by J.C.Okazawa
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蓋を開けると
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玉子のとじ加減がいい塩梅
photo by J.C.Okazawa
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それぞれに満足感を得て東京への帰路につく。
途中、ラードの香ばしい匂いにつられて
隣りの「安田屋」で買い求めた
メンチカツとコロッケはおいしかったが
お花畑のアーケードで買ったおやきは粉っぽい。
池袋の西武で調達したコチの刺身は花マル。
その夜は自宅で夕食を取ったのでした。
【本日の店舗紹介】
「パリー食堂」
埼玉県秩父市番場町19-8
0494-22-0422
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