「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第690回
友里征耶と呉越同舟(その2)

中華ランチ対談のあとで友里征耶とともに
神楽坂のリヨン料理店に来ている。
前菜を待つあいだ、パンが出て来たので
バターをお願いしたところだ。

すると、
「すみません、バターはご用意できません。
 高過ぎてあつかえないんです」
ギャルソンが困ったように釈明する。
「代わりにオリーヴオイルをお出しします」
高級フレンチ・ビストロ・ブラッスリー、
過去に何回訪れたか数え切れないが
「バターがない」と宣言されたのは初体験。

飲食店もご多分にもれず、冬の時代を迎えている。
しかし、経費を削減するにしても、
バターにまでしわ寄せが来るようでは困る。
第一、この店では料理に
バターを一切使わないのだろうか。
円高還元で値下げを断行する店が少なくないなか、
これには驚きを通り越して唖然とした。

フロアでは小太りの外人スタッフが一人、
日本人に混じって接客に努めている。
あとで判ったことだが、
この人がオーナーシェフと聞いてまたびっくり。
レストランでシェフが厨房を離れると、
あまりいいことがないのは通説なのに――。
まっ、いろいろやりくりしているのだろう。

何の変哲もないグリーンサラダは
ヴィネグレットの効いたドレッシングが
シャープで食欲をそそるスターターとなった。
脇に添えられたレンズ豆とベーコンと野菜を
軽く煮込んだサラダ仕立ては
パンに塗って食べるようにおおせつかる。
はは〜ん、これがバターの代わりだな。

主菜のあいなめのソテーは
緑色の濃厚なソースでいただく。
先刻のギャルソンの説明によれば、
あたまねぎのソースということだった。
あたまねぎとは何のことやらと思っていたら
あいなめの上にシブレットがパラリと――。
シブレットはふぐのポン酢に
よく使われる、鴨頭ねぎに似ている。
ここでJ.C.、ピンと来た。
鴨頭ねぎを頭ねぎと勘違いしているんじゃないか。

その二日後のこと。この日の散歩コースは
柳橋―両国―錦糸町―住吉―西大島―大島 
終着の大島には下町チックな
サンロード中の橋商店街があり、好きなスポットだ。
たまたま入ったスーパーの野菜売り場で
目に飛び込んできたのが葉玉ねぎ。
この瞬間にひらめいた。
頭の中の豆電球がピカッと光ったのである。
「あれは頭ねぎじゃなく、葉玉ねぎだったんだ!」
いやはやJ.C.としたことが……。
ギャルソンの勘違いどころか、J.C.の早とちりであった。

「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」の
1850円ランチは味はまずまずながら、
割高感が否めない。
ローヌの若いグラスワインのお替わりが
800円というのも、ぼったくりもいいところ。
1杯売るだけで、1本の原価を稼ぎ出す。
そうそう、忘れるところであった。
バターはなくともパンはとてもおいしいものでした。


【本日の店舗紹介】
「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」
 東京都新宿区神楽坂4-3-7
 03-6426-1201

 
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2009年2月24日(火)

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