「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第703回
甘い誘惑

甘いものはめったに口にしない。
それが最近、たまに食べるようになった。
もともと甘いものが嫌いなわけではなく、
菓子やデザートを好まないだけだ。
食事が不味くなるので、間食をしない。
食後酒のジャマになるから、デザートを取らない。

その反動か、玉子焼きなどは関西風のだし巻きよりも
関東風の甘辛い味付けが好きだ。
牛肉だってしゃぶしゃぶよりもすき焼きがよい。
これってやっぱり和菓子・洋菓子を食べぬ反動だろう。

実は果物もそうなのだ。
ときどき枇杷や白桃を食べたくなるものの、
普段はフルーツと無縁の生活をしている。
ところが搾りたての生ジュースには目がない。
日本橋高島屋地下のフルーツパーラー「レモン」には
ひと夏に何度も出没する。
あそこのかぼすスカッシュや西瓜ジュースは最高だ。

みかん・オレンジもそのままだと無視だが
ジュースになれば半リットルくらい朝めし前。
そう思うと、好きな果物は上記の枇杷・白桃のほかに
梨・西瓜・パッションフルーツと、みずみずしいものばかり。
りんごやバナナなど、汁気のないヤツには見向きもしない。
子どもの頃は印度りんごと台湾バナナが大好きだったのに。

甘いものを口にするようになったのにはわけがある。
食べ歩き仲間のN戸夫妻がたびたびおみやげをくれるのだ。
梅干しだったり、ふきのとう味噌だったりもするが
流行りのバウムクーヘンや老舗のどら焼きだったりもする。

ある日、浅草「おがわ」のどら焼きをいただいた。
何年、いや何十年ぶり(ちょっと大げさ)に食べて
おや、どら焼きってこんなにうまいものだったっけ?
思わず、ためつすがめつしてしまった。
上品な餡の甘みのあとから
小豆の風味がほんのりと立ち上がってくる。

そういえば、ここ数ヶ月の間に
墨堤通りの「志まん草餅」や
北千住の「槍かけだんご」も味わう機会に恵まれた。
読者のO堤さんから珍しい抹茶餡のどら焼きを
送られたりもして、みなおいしくいただけた。

3月初めの日曜日午後。
阿佐ヶ谷―鷺宮―都立家政―野方のコースで
散歩をしようと思い、まずは阿佐ヶ谷駅に降り立つ。
駅周辺をぐるりと周っていると、
どら焼きが自慢の和菓子店「うさぎや」の前に
長蛇の列ができている。
以前にも何回か店の前を通り過ぎたが
これほどの行列は見たことがない。

魔がさしたものか30分も並んで
くだんのどら焼きを買い求め、さっそくパクリとやった。
はたして「おがわ」VS「うさぎや」は「おがわ」に軍配。
鮨・天ぷら・うなぎ・そば、そして和菓子と
江戸の昔からある食べものに関しては
ことほどさように、新宿以西の中央線よりも
東銀座以北の浅草線のレベルのほうがずっと高いのである。

それにしても和菓子店を見るたびに
ついどら焼きを探すようになってしまった。
食べたいというより、比べてみたいのである。
これも一種の甘い誘惑なのかしら・・・。

 
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2009年3月13日(金)

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