「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第705回
女三代のおでん屋さん

JR山手線の駅の数は29駅。
駅のプラットフォームからの
景色がよいのは断トツで五反田だ。
駅東側(山手線内側)のロータリーは
昭和30年代とそれほど変わることなく、
何ともノスタルジック。
そのせいか五反田は好きな町である。

抜群のピッツァを食べさせた
「イル・パドリーノ」が閉店してしまい、
行き場を失った感のある五反田で一夜、
友人たちと飲むことになった。
こんな場合に店の選択を任されるのは常にJ.C.だ。
その日も例外ではなかった。
フラフラさまよった末に行き着いたのは
おでん屋さんと思しき「若ちゃん」という店。
博多の屋台みたいに垢抜けない屋号。

さほど期待もしないまま暖簾をくぐった。
仲間が来るまで独りビールを飲む。
突き出しは春菊胡麻和え。
しゃきしゃきの食感が快適で
これならまず大丈夫だろうと一安心する。

品書きに小鯛の笹漬けが載っている。
笹漬けは既製品だが好物なのでお願い。
盛り付けが美しく、
ありがたいことに添えられたのは本わさび。
こんな店ならおでんもいいに決まっている。

友人3人が現れ、ビールで乾杯。
各自好きなものを注文する。
おでんでは真っ先に揚げボールだ。
丸いのが3個、串刺しとなってだんご三兄弟風。
串から解放してやり、練り辛子を塗ってパクリ。
「おっ、うまいじゃないか」――頬がゆるんだ。
関西風のあっさり出汁は素材の持ち味を引き立てる。
銀座きっての高級店「やす幸」の味に似ている。
こんなに上品な出汁ならば、
おでん種もデリケートなものを見繕い、
お次は白滝と焼き豆腐だ。

存在感あふれる焼き豆腐
photo by J.C.Okazawa

この頃には菊正のお銚子も早や二本目。
たら子おろしをはさみ、再びおでんに戻る。
腰を浮かせて鍋の中をのぞくと、
うれしいじゃないですか、
鯨のコロ(皮下脂肪)が目に飛び込んだ。
関東でなじみの薄いコロだが、関西では人気者。
それ自身がおでん種となり、よい出汁も出る。

店の切り盛りは女性ばかりが3人。
お婆ちゃん・お母さん・娘さんのようだ。
娘さんといっても左の薬指にリングが
光っていたから3人ともミセスなのだろう。
それぞれに客あしらいもよろしく、
雰囲気の和みにつながっている。

再訪に値する店を五反田で発見したのは大きな収穫。
帰りも浅草線一本で、しかも電車はガラガラ。
月に一度はこの町にやって来ることにしよう。


【本日の店舗紹介】
「若ちゃん」
 東京都品川区西五反田1-11-10
 03-3491-6989

 
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2009年3月17日(火)

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