「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第706回
田園調布でランチのはしご(その1)

東京都きっての高級住宅街、大田区・田園調布。
この街並みを初めて目にしたのは日活映画。
石坂洋次郎原作の「陽のあたる坂道」(田坂具隆監督)は
大した事件も起こらないのに3時間を超える長編だった。
退屈もせずに観ていた自分が不思議でならない。

映画の冒頭シーン。
故・石原裕次郎夫人の北原三枝が並木道を歩いてゆく。
映画では藤竜也夫人の芦川いづみが裕次郎の異母妹役で
その家庭教師が北原三枝なのだ。
裕次郎のデビュー間もない1958年の作品である。
考えてみれば、石原裕次郎という俳優はその黎明期に
アクションと文芸路線の二足のわらじを履いていたのだ。

古くはこの田園調布、
それほどの高級住宅街というわけでもなく、
中の上程度の知識層が棲みついていたらしい。
それが戦後になってどうしたものか
土地や株で成り上がった、
少々、下世話な階層民が好んで移り住んだのである。

ともあれ、そんな場違いな場所に
ある日突然、J.C.が現れた。
前著「昼めしを食べる」の実証検分のためだ。
ターゲットはとんかつ店「かつ久」と鮨店「醍醐」。
遠路はるばる出掛けて行くのだ、
1軒だけの訪問では時間と労力がもったいない。
ハナから2軒のハシゴを目論んでいた。

1軒目の「かつ久」を目指して、駅の改札を右に出た。
長嶋元巨人監督が行きつけた焼き鳥屋が向かいに見える。
こちらは住宅街とは反対側にあたり、
ゆるやかな下りの坂道が商店街を形成している。
坂を下ってその突き当たり、
目当ての「かつ久」が暖簾を掲げていた。

昼の特別メニューは3種類。
サービスかつ定食と小ヒレ定食が1400円。
海老フライ定食が1300円だ。
サービスかつというのは
小さめのロースのことだろうと目星をつけて注文。
ところが店主曰く、
「今日の肉は品質不良で返品したからありません」。
仕方なくロースカツ定食(1800円)にしたが
フトコロにも胃袋にも負担を掛けることとなった。
しかもこのあと、大阪寿司が待っている。

ロースかつは見るからにいかつい相貌をしている。

見た目は無骨なロースかつ
photo by J.C.Okazawa

かなりの厚さを持つ肉塊が
ザクザクと5片にカットされている。
1切れ食べてみて、すぐに気づいた。
ロースはロースでもこれは肩ロースだ。
悪くはないが、やはり正統なロースのほうがいいな。
それよりも特筆すべきは
ぬか漬け・赤だし・ごはんのゴールデン・トリオ。
とんかつのレベルより、こちらのほうが高い。
次回は車海老使用の海老フライをお願いして
トリオを再び満喫しようと心に決めた。


【本日の店舗紹介】
「かつ久」
 東京都大田区田園調布2-48-15
 03-3721-2629

 
←前回記事へ

2009年3月18日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ