「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第712回
町で評判の「都寿司」(その1)

「みやこずし」は「みやこずし」でも
浅草の「弁天山美家古寿司」ではなくて
日本橋は旧・橘町の「都寿司」のことである。
この店はここ数年、
メキメキと頭角を現して、広く世に知られつつある。

それにしても旧・橘町の現在の町名は
東日本橋と、味も素っ気もない。
日本橋に東も西もあるもんけェ。
北詰めと南詰めがあるだけでェ。
お役人のセンスのなさ、ここに極まれり。

逆L字形カウンターの底辺にわれら4人は陣取った。
つけ台は10席余りだろうか。
テーブルが1卓あったが、荷物置き場に使われていた。
ビールで乾杯後、
ただちに鹿児島産の芋焼酎をボトルで入れてもらった。
銘柄は宇吉。
瞬間、寺尾聡のお父さん、
宇野重吉の顔がまぶたに浮かんだ。

基本的にこの店はおまかせ一本である。
タップリ飲んでつまんでにぎってもらい、
お一人様一万四千円前後のお会計だ。
従って、わが「庶ミンシュラン」には高嶺の花にすぎない。
それでも内容から判断して高いとあh思えない。

いただき物を順に記そう。
一品目はのれそれ。
のれそれって、何だそれ? ってか?
穴子の稚魚ざんす。
大人になると穴子とうなぎはよく似てくるのに
ご幼少のみぎりは似ても似つかない。
うなぎの稚魚が大きめ長めのシラスみたいなのに対して
穴子のそれは透明でやや平ぺったい。
まるで葛切りのようだ。
大してうまいものではないが、食感と季節感を楽しめる。

のれそれは紅葉おろしで
photo by J.C.Okazawa

二品目はサッとあぶった北寄貝。
この貝は熱が通るとほのかに赤らむ。
これにはあんまり感心しなかった。
火の通りすぎで固くなっている。
浅草は雷門脇の「志ぶや」の湯引きのほうが数段上。
平貝(たいらぎ)はあぶりでよいが
北寄は湯引きのほうが素材の特質が活かせる。

続いては皮はぎの肝醤油。
これはなかなかで失点挽回。

皮はぎはその肝で
photo by J.C.Okazawa

白身の魚はJ.C.の大好物。
中でも皮はぎはふぐより好きなくらい。
何となれば肝の食えないふぐに対して
皮はぎは肝の魅力を十二分に味わえるからだ。

ここ十年ほどの間にどこの鮨屋でもやるようになった
磯辺巻きは平貝ではなく帆立貝だった。
帆立では平貝の持つ深いコク味は望めない。
けっして悪くはないけれど、
銀座あたりの高級鮨店は平貝を使うのが当たり前。
仕入れ値も帆立の数倍はするのではなかろうか。

             =つづく=

 
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2009年3月26日(木)

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