第714回
町で評判の「都寿司」(その3)
東日本橋は旧・橘町の「都寿司」。
おまかせにぎりもすでに終盤に差し掛かっている。
ここまで、小肌・真鯛松皮造り・春子昆布〆・
生あじ・あぶり金目・〆さば・大星軍艦の順で
計7カンを食べ終えたところだ。
鹿児島の芋焼酎・宇吉のボトルも
ほとんどカラになろうとしている。
ここでお茶代わりに冷たいビールを頼んだ。
最近は食事の終盤に再びビールが飲みたくなる。
仲間3人に異存とてなく、
みなうまそうに琥珀色の液体を喉に送り込んでいる。
ここで今宵初めてのまぐろモノ、中とろが登場。
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大とろに近い中とろ
photo by J.C.Okazawa
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とろ好きにはたまらない景色である。
「ゆうひ鮨」の中とろもご覧あれ。
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こちらはまぎれもない中とろ
photo by J.C.Okazawa
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産地は聞きもらしたが、やはり津軽海峡だろうか。
ここ数ヶ月、トップブランドの大間産が
絶不調ならぬ絶不漁で
まぐろ漁に携わる漁師さんは揃って
おまんまの食い上げ状態が続いているという。
海水の温度が高すぎて、まぐろのエサとなる
サンマが大間沖にやって来ないのだ。
海水温のせいで漁場は
大間よりずっと西の竜飛沖に移ってしまった。
この海域でしとめられたまぐろは
竜飛岬の南東、三厩(みんまや)の港に水揚げされる。
お次は茹で上げた車海老。
J.C.の好きな鮨種の一つである。
最近はどの江戸前鮨店でも
立派な車海老を仕入れているけれど、
もうちょい小さめの巻き海老あたりが好みだ。
そのほうが仕入れ値もグッと安くなるだろうし・・・。
続いては生海胆。
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「都寿司」のむささき海胆
photo by J.C.Okazawa
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海苔を使った軍艦巻きにはしない。
本駒込の「ゆうひ鮨」も海苔を使わなかった。
海苔の風味はけっして海胆のそれとマッチしないから
海苔抜きが正解なのだ。
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「ゆうひ鮨」のばふん海胆
photo by J.C.Okazawa
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どうみても、ばふんのほうがうまそうだ。
馬糞だなどと、とんでもない名前を付けられてしまったが
生で食べるのであれば、ばふん海胆が数段よい。
締めは煮ツメを一刷毛した穴子。
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ずんぐりむっくりの穴子
photo by J.C.Okazawa
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ふっくら柔らかなタイプで
「弁天山美家古」のプリッとした
沢煮のうまさを知るものにはもの足りない。
歯のない人でも食べられるような
穴子の横行は寂しい限りである。
結局、にぎりは合計11カンであった。
「都寿司」の一夜は満足に値するものであった。
最後にこの店のMVPを紹介しておこう。
まぐろでも小肌でも真鯛でもなく、それは漬け生姜。
新生姜だけを使い、甘さを排した漬け込みも実に非凡。
快適な歯ざわりのあと、
さわやかな香気が鼻腔を抜けてゆく。
東京一の漬け生姜の折り紙を付けたい。
ただし、生姜ばっかりお替わりする
野暮な客だけにはならないで下さいましよ。
【今回の店舗紹介】
「都寿司」
東京都中央区東日本橋3-1-3
03-3669-3855
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