第721回
お花見三昧 三連荘
三月弥生の月末に温度の低い日が続いたものだから
ほころびかけた桜の花も
かたくなにそのつぼみを閉じてしまった。
28・29日の週末は東京のあちこちで
肩透かしに泣いた花見客があふれたことだろう。
28日の土曜日は茨城県の牛久シャトーに出掛けた。
敷地内のソメイヨシノを愛でるためである。
これが悲しいかなかろうじて一分咲き。
目論みは完全に外れて空振りに終わり、
その日はフレンチレストラン「キャノン」で
夕食をいただいてきた。
その模様は近々またお伝えすることにしよう。
翌29日の日曜日。
根津近辺で所用を済ませたあと、
不忍池のほとりを伝って上野のお山に上る道すがら。
弁天堂の脇を抜け、天龍橋に差し掛かったとき、
のどの渇きを覚えて、つい橋のたもとの茶店に入店し、
ビールの中瓶を1本空けた。
その足で清水観音堂に上ってはみたものの、
肝心の桜は三分咲きといったところだろうか。
吹く風も肌に冷たい。
結局、お花見は1週間のお預けと相成った。
明けて4月4日の土曜日。
午後から代々木のアトリエ・ムジカにて
フルートの衣川倫代さんとハープの石ア菜々さんの
ジョイントコンサートは、題して「春の馨」。
サン=サーンスやグルックの名曲に耳を傾けたあと、
どこかで花見をという流れになった。
宴会を張るのではなく、桜並木をそぞろ歩くのである。
総武線の黄色い電車で市ヶ谷へ出て、
外濠の土手沿いを飯田橋方面へと歩く仲間は総勢7人。
法政大学の前を右折して靖国神社を裏から入り、
境内のど真ん中を九段下に向かって縦断する。
ここから靖国通りを渡って、千鳥ヶ淵や牛ヶ淵に回れば、
その絶景たるや脳裏に強く灼きつくことは必定なれど、
散策路からあふれて濠端にこぼれんばかりの
花見客の数にはさすがに尻込みしてしまい、
花より団子よろしく、
早めの夕食を取るために神保町へと向かった。
なだれ込んだのは寧波家庭料理の「源来酒家」。
その様子はまたの機会に。
翌5日の日曜日は午前10時に雷門集合。
ワインの飲み会仲間が10人ほど集った。
吾妻橋と言問橋の中間辺りに陣取ったのはよいが
ここは散策する人々の動線のすぐ脇に当たり、
砂ぼこりの洗礼を受けることになる。
たまたま風の弱い日で難をしのぐことができたが
それでも時間を追うごとに
酒のつまみにジャリジャリ感が生ずる。
あとに別口の宴会が控えていたため、ここは早めに退散。
そして一昨日は月曜日の昼下がり。
柳橋を渡って両国橋西詰から浜町河岸を一気に南下。
たどり着いたは浜町公園、すぐお隣りは明治座だ。
汗ばむほどのポカポカ陽気に、そよ風そよぐ春の午後。
散りゆく身を恥じらうように桜吹雪が舞い始める。
今年一番の花見日和は実にこの日であった。
世間の不景気も何のその、
春は必ずめぐり来て、桜は必ず咲き誇る。
ソメイヨシノが生まれてこのかた、せいぜい150年。
こんなに日本人の心に染み入る草花はほかにあるまい。
|