「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第728回
恋は小岩と 下手なしゃれ(その1)

このところ散歩の達人・坂崎重盛さんの
「東京煮込み横丁評判記」を片手に
東京都内、あちらこちらに出没している。
この本のテーマは「煮込み」であるからにして
当然のことながら大衆酒場の探訪記だ。
J.C.がこよなく愛するワールドである。

この人の書いたモノを読んでいると、
思わずニヤリとさせられることが少なくない。
茶目っ気と色気がたっぷりと盛り込まれていて
さながら煮込みの趣きがある。
好きなモノ書きサンのお一人である。

本来は造園の専門家なのに
今となっては散歩とか蒐集とか、
およそ金にならないことに血道を上げて歓んでいる。
いや、歓んでいるのかどうかは判らない。
ただ、傍目にはそう映るのである。
第一、蒐集なんて道楽は金にならないどころか
一度始めたが最後、それこそ小原庄助サンみたいに
シンショウをつぶすまで収まりきるものではない。

奇人らしからぬ奇人とは
こういう人を指していうのだろう。
散歩だけにしておけばよいものを
蒐集は散財そのものではないか。
言わば、この人の趣味は散歩と散財なのである。
散歩と散財、この二つが合わさると
まさしく散々な人生ということになる。
アーメン!

「東京煮込み横丁評判記」を熟読して
自分との行動範囲の酷似に驚きを隠せなかった。
お互い、夕暮れまで待てずに
東京の町々を徘徊しているのだから
それも至極当然のことではある。
それでも一箇所だけ、
J.C.があまり足を踏み入れないエリアがあった。
JR総武線・新小岩と市川の間の小岩である。

小岩と聞くと、即座にまぶたに浮かぶ演歌の歌詞がある。
宇多田ヒカルのお母さん、藤圭子の唄った「はしご酒」だ。
1975年の作品でメロディーもいいが歌詞がふるっている。
一番から五番まで墨東の飲み屋街が続々と登場するのだ。
錦糸町―亀戸―平井―小岩と総武線沿線を
東に向かって順番に進んで来たら
いきなり押上に戻ったかと思うと、今度は金町にぶっ飛ぶ。
金町だったら小岩からのほうがずっと近いのに、だ。
そして最終の五番で突如として
浅草にアウフヘーベンして終わるのである。

小岩が主役となる三番だけ引用しておく。

♪ 飲めば飲むほど 嬉しくて
   知らずに知らずに はしご酒
   恋は小岩と 下手なしゃれ
   酒の肴に ほすグラス
   よってらっしゃい
   よってらっしゃい お兄さん ♪

     (作詞:はぞの なな 作曲:赤坂 通)

作詞家も作曲家もユニークなお名前。

その小岩に降り立った。

           =つづく=

 
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2009年4月17日(金)

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