「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第730
恋は小岩と 下手なしゃれ(その3)

目の前のY子さんが
まぐろのアゴ焼きを食べ終えるのを待って
再び宵闇迫る小岩の町に出る。

坂崎重盛著「東京煮込み横丁評判記」を頼りに
お次は線路の反対側、北口の「大竹」である。
重盛翁によると、小岩でもつ焼き&もつ煮込みとなれば、
真っ先に「大竹」であるらしい。
太鼓判を押されては立ち寄らぬわけにはまいるまい。
16時半の開店と同時に席が埋まってしまうらしいが
どうにかなるだろうと、タカをくくって向かった。
ところがどうにもならなかったのである。
敵陣に一歩たりとも踏み込めなかったのである。
この世に神も仏もあったものではなかった。
というのは大げさで、何のことはない、
その日が定休日に当たっていただけのこと。

捨てる神あらば、拾う神あり。
「大竹」の並びに、レトロな中華そば屋を発見。
ラーメン屋ではない中華そば屋である。
いわゆる町の中華屋さんは、ラーメンだけでなく、
餃子や炒飯や野菜炒めや酢豚なんかも作ってくれる。
定食類なんぞもズラリと取り揃えてあった。
「サンゴ亭」という屋号もシャレているではないか。
「サンゴ」って「珊瑚」かな、まさか「産後」ではあるまい。

ここで9年前に訪れた中華そばの
今は無き「三五郎」を思い出した。
ひょっとしたらこの「サンゴ」は
あの「三五郎」の「三五」のことではないのか?
Y子さんには食事を取ってもらわねばならぬし、
レトロな雰囲気に背中を押されて入店する。
J.C.は餃子でビールを飲み、彼女は肉野菜炒め定食だ。
しかし、どちらも化調まみれでどうにもならない。
大きく外してしまい、即刻移動した。
駅に向かう道すがら、北口にも「立呑み処くら」を発見。
あとで調べたら亀戸や本八幡にも支店を展開していた。

南口に戻って「若草」なる居酒屋とも
和食店ともつかない小体な店の暖簾をくぐる。
銘柄を忘れてしまったが、上燗の大徳利をお願いして
まぐろの山かけとかぼちゃの煮付け。
ともに当たりであった。
親父さん一人で頑張っているが、ここはよい店だ。
Y子さんが秋刀魚を食べたいというので
季節外れの秋刀魚塩焼きをお願いすると、望外の美味。
これはきっと、旬のモノを急速冷凍に掛けたのだろうな。
「若草」のおかげで救われた小岩の夜であった。

それから間もない金曜日の夜10時過ぎ。
日本橋のイタリアンのあとに蜂蜜屋のY里嬢を伴って
神保町の「やまじょう」に流れると、
カウンターの片隅に見覚えのある翁ありけり。
烏帽子でもかぶっていれば、竹取の翁だろうが
この翁はソフトやハンチングを好んでかぶる。

何を隠そう、この御仁こそ重盛の翁、その人であった。
久々の再会を祝し、乾杯を済ませてからがスゴかった。
Y里嬢もほかの客もスタッフも家路を急いだそのあとで
女将も加わりわれら3人、飲めや歌えのバカ騒ぎ。
いえ、本当に何曲もアカペラで歌ったんですから・・・。
傍で見てたら「馬鹿じゃないの?」――てな感じ。
でも、さすがに坂崎幸之助の叔父御だけのことはある。
ふと時計に目をやると、東京午前三時ではないか!
翌日が土曜とはいえ重盛の翁、勘弁してくださいよ。
お願いしますよ、ホント。


【本日の店舗紹介】
「若草」
 東京都江戸川区南小岩8-15-18
 03-3658-0181

 
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2009年4月21日(火)

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