第733回
蝦蛄と穴子と蛤と(その2)
4人揃ってニコニコ顔で
浅草は馬道の「弁天山美家古寿司」にいる。
残念ながらつけ台には座れなかったが
4人でつけ台だと一つの会話ではなく、
二つの対話になりがちだから
むしろテーブルのほうがよかったかもしれない。
物事はよい方向によい方向にと
考えることが肝要なのである。
テーブルでは各自お好みというわけにもいかない。
もちろん何を何カンという頼み方もできるが、
それはせめて追加分に限ったほうが
親方だってシゴトがしやすいはずだ。
まずはおつまみを数品、
おまかせでお願いして品書きに見入った。
ちょうどよい機会だから
その全貌をつまびらかにしてみる。
=御品書き=
松 |
握り六 |
巻もの三切れ |
2100 |
梅 |
握り七 |
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2940 |
浅茅 |
握り十 |
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5150 |
鬼灯 |
握り十二 |
小づけ丼 |
8400 |
弁天山 |
握り十二 |
巻もの一本 |
7350 |
美家古 |
握り十七 |
巻もの一本 |
9975 |
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ちらし |
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3150 |
鉄火丼 |
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3150 |
づけ丼 |
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3780 |
小づけ丼 |
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2100 |
鉄火巻 |
三本 |
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3150 |
海苔巻 |
かんぴょう |
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2100 |
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つまみものいろいろございます |
われら4人が選んだのは握り10カンの浅茅である。
ゲソのあとは、そのやりいかの糸造りだ。
これがおっそろしく柔らかい。
秋口に出回るすみいかの赤ちゃん、
いわゆる新いか並みの柔らかさなのである。
そして平貝の磯辺巻きと続く。
他店ではポピュラーなこの磯辺巻き、
「美家古」では初めてお目にかかった。
ここで菊正宗の樽酒と金冠大関の燗で迷った挙句、
金冠大関をチョイスする。
この店は昔からずっと大関を提供している。
30年前の初訪問時はつけ台の端っこに
大きな大関の菰樽(こもだる)が
鎮座ましましていたものである。
お次のぬたには分葱と若布のほかに
まぐろの赤身と赤貝のヒモが忍ばせてあった。
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赤身の下には赤貝ヒモが
photo by J.C.Okazawa
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これは一鉢で二度も三度も美味しい。
大関にもピタリと寄り添った。
=つづく=
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