第739回
蛍いかの顔も三度まで(その2)
「庶ミンシュラン」の取材の際に
活躍してくれたサテライツのメンバーを一人伴って
北区・王子の「山田屋」に来ている。
午後4時過ぎだからまだ外は明るい。
そば入りの半熟玉子で
キリンのクラシックラガーを飲みつつ、
壁の品書きに目をこらす。
この日はこのあと、町屋の町をハシゴするので
つまみはほかに2品だけとした。
選んだのはまず新物の蛍いかだ。
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丸々と太った蛍いか
photo by J.C.Okazawa
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今年初めての蛍クンは丁寧に目玉を抜かれていた。
これがズボラな店だと、
目玉を抜かずに手を抜くから
結果として目玉が残る。
そうとは知らずにパクリとやると、
奥歯に当たって痛い思いをすることにも
なりかねないのだ。
粉わさびをちょこんとつけて
口元に運ぶと、弾力に富んだ身肉が
歯に舌に心地よい。
こればっかりはほかのいかたちでは
味わえない美味である。
最近は街のトラットリアあたりでも
蛍いかのパスタなんぞを供するようになったが
サッとボイルしただけのものが何よりだ。
しかもこれが240円ではまったくもって言うことナシ。
もう一品は気になって仕方がなかったカレーボール。
これはいったい何だろう。
サテライトとは予想が分れた。
ヤッコさん曰く、カレー粉入りのコロッケ。
J.C.はカレー風味のさつま揚げのボール。
結果はJ.C.の思った通りで
リーダーとしての面目を保つ。
このカレーボールを運んでくれた
オバちゃんの科白がふるっている。
「あたし、これ出すのが一番イヤなの」
「そりゃまた、どうして?」
「だって、ボールがころころしてるだけで
恰好がつかないじゃない」
言われてみればその通りだ。
おでんつゆがヒタヒタの皿にボールが4個、
あとは練り辛子だけなのである。
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実に殺風景なカレーボール
photo by J.C.Okazawa
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カレーボールでボヤいたオバちゃん
photo by J.C.Okazawa
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オバちゃんに別れを告げて王子駅に舞い戻る。
次なる目的地は町屋である。
ということはチンチン電車の都営荒川線で一本だ。
15分ほど揺られて町屋駅の一つ手前で下車。
その線路沿いにあるもつ焼きの「亀田」に入店。
「山田屋」ではビールだけだったので
ここでは燗酒か酎ハイと思ったものの、
ふと飲みたくなってキリンの黒ビールの小瓶。
相方はハナから燗酒である。
ちょいと冷えてきたので最初の一品はもつ煮込み。
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塩味仕立てのもつ煮込み
photo by J.C.Okazawa
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何とこれが270円とは驚きだ。
=つづく=
【本日の店舗紹介】
「山田屋」
東京都北区王子1-19-6
03-3911-2652 |