第741回
蛍いかの顔も三度まで(その4)
この日は午後4時過ぎに相方と飲み始めたのだった。
今は早や4軒目の店に入店したところだ。
王子の「山田屋」を皮切りに都営荒川線で町屋に移動し、
もつ焼きの「亀田」、もつ串煮込みの「小林」を経て
この「ときわ食堂」の暖簾をくぐったのだ。
都内各地に点在する「ときわ食堂」の屋号は食堂でも
夜ともなれば、大衆酒場をも兼ねる店舗がほとんどだ。
殊に町屋のこの店はその特性が色濃く、
壁に貼り出された品書きの短冊の数がすさまじい。
ざっと紹介してみよう。
■定食の部
ミックスフライ・ヒレカツ・ニラレバ炒め780円
とんかつ・ハンバーグエッグ・大メンチカツ750円
チキンカツ・カツ皿・豚鉄板焼き650円
■どんぶり系の部
カツ丼580円 開化丼530円 親子丼500円
玉子丼440円 うな重1500円 チャーハン480円
カツカレーライス550円 カレーライス450円
■つまみの部
いぶりがっこ180円 トマト280円 天豆450円
わさび漬250円 鯨ベーコン700円 いか塩辛170円
銀杏・まぐろぶつ・こまい丸干し380円
■一品料理の部
茶碗蒸し380円 ホルモン炒め・野菜炒め370円
さば塩焼き450円 豚生姜焼き・鳥唐揚げ400円
かきバター焼き550円 八宝菜600円
このほかに本日の日替わり定食が4種類。
さんま塩焼き・豚肉味噌漬け焼き・
おにぎり付きカレーうどんが520円均一で
刺身盛合わせが550円と格安。
エラいのは味噌汁だけでも
しじみ・あさり・わかめ・なめこに加えて
豚汁と玉子汁まで取り揃えた充実ぶり。
こういう食堂が1軒、われ棲む町にあったら
どんなに幸せだろうか。
これだけの品書きを前にしているのに
われら二人の胃袋は
見栄張りカエルの腹のようにパンパンであった。
それでも頑張った。
まずはスーパードライの大瓶を1本お願いする。
このとき、お運びのお姉さんがすすめてくれたのが
生の蛍いかだったのである。
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富山湾に揚がった生蛍いか
photo by J.C.Okazawa
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7匹の蛍はおのれの鮮度の高さを誇示するが如く、
光り輝いていた。
そうなのだ。
この時期ならば湾内の蛍いかは
まだ水深の深いところに生息しているため、
寄生虫に取り付かれる心配がなく、
ボイルしたり、沖漬けにしたりせずとも
生でいただけるのであった。
大人二人で蛍いかだけでは店にも迷惑をかけるので
もう1品選んだのがどういうわけか豚鉄板焼き。
相方によると、
これなら野菜もふんだんに摂取できるとのこと。
こいつは言い出しっぺにほとんど任せ、
こちらはビールの大瓶を何とか飲み干したのであった。
=つづく=
【本日の店舗紹介】
「ときわ食堂」
東京都荒川区荒川7-14-9
03-3805-2345
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