「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第753回
薬膳料理に効果はあるのか?(その1)

中国には古くから医食同源という言葉がある。
ほかの国の人々があまり頓着しない考え方である。

それでもここ十数年、
海の向こうのアメリカでは
健康に留意した食事の摂り方うんぬんが
声高に叫ばれ続けている。
それはそうだろう、
誰がどう見ても平均的米国人は太り過ぎだ。
摂取する食物の絶対量が
日本人の比ではないから無理もない。
しかし、あの調子で食べ続けたらまず長生きはできまい。

1990年代、ウォール街で働いていた頃の一時期。
周りのニューヨーカーたちは
ダイエット、ダイエット、
ヘルシー、ヘルシーの大合唱。
大きなサラダボールを前にいきり立って
ヘルシー、ヘルシーと叫べば叫ぶほど、
こちらの耳にはアンヘルシーと
空しく響くばかりであった。

痩せたいと思ったら断食するのが一番。
脂肪を落としたいなら、食べなければそれでよい。
腹一杯食べておきながら痩せようなんて魂胆は
土台ムリなハナシで
発想自体が人間としてすでに浅ましい。

節食とは意味合いが違うが
もともとJ.C.は医食同源・漢方薬・
薬膳料理というものにほとんど興味がない。
というか、なるべく「医」と「食」を
切り離して考えたいタイプなのである。
「薬物」と「食物」を同じ食卓におき、
同時に摂取することに抵抗があるからだ。

ふた昔も以前のこと。
シンガポールで体調を崩したことがあった。
このとき広東系中国人の女友だちが
烏骨鶏を丸一羽使ったスープを作ってくれた。
彼女曰く「弱った身体によく効くのよ」。

確かに効いた。
数時間後には元気になったもの。
ただ、これって薬効とは違うんじゃないかなーー。
高麗人参やら何やら、いろいろと霊験あらたかなものを
投入してくれたらしいが、薬効そのものより、
烏骨鶏のスープ自体が美味しかったのと、
栄養満点だったのとが、うまい具合に重なり合って
病人を元気にしてくれたのだと思う。

骨も皮も羽根も、烏のように真っ黒な烏骨鶏は
肉を食べずにそのスープだけを味わうものらしい。
出汁が出てしまい、抜け殻のようだったとしても
そのときの烏骨鶏の身肉はじゅうぶんに美味しかった。
病人の回復を目の当たりにして
女友だちが鼻高々だったことはあえて記すまでもない。

ここで舞台はシンガポールから東銀座へ。
晴海通りと昭和通りがぶつかる交差点。
もうじき建て替えられる歌舞伎座前の十文字だが
ビルの階上に薬膳料理で評判をとる
「黎花(らいか)」という中国料理店がある。
この春で廃刊となってしまった
「大人のウォーカー」の取材で訪れた。


               =つづく=

 
←前回記事へ

2009年5月22日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ